【増永】 起業した頃の江見社長の仕事はどのようなことでしたか。
それこそ、岐阜ではサンドウィッチを作るためにトマトやレタスを切っていましたよ(笑)。その後、東京に来る際、7人で風呂敷かついでやってきました。
でもその半年後には一気呵成の出店攻勢を開始し、わずか1年9ヶ月で200店舗の出店をしました。
● 環境が急変しているわけですが、当時どのようなことを学びましたか。
チームワークですね。多いときで1日に10軒の出店が続いたこともありました。そうなってくると、自分ひとりでは限界です。なにもできないんですね。
通常ではできないことを進めていかなければならないわけですから、今まで認識していた常識的な考え方だけに縛られるのではなく、「今、自分はなにができるのか」―これについて考えるようになりました。
その活動のなかで重要であると思うようになったのが、3つの能力です。
● その3つの能力を教えてください。
1つが「テクニカル・スキル」になります。いわゆる仕事の方法論です。次に「ヒューマン・スキル」―人間力ですね。そして最後に「コンセプチュアル・スキル」―概念形成になります。
この3つのスキルのなかでまず特化すべきなのが、「ヒューマン・スキル」です。
どれだけ一人ひとりが素晴らしい能力を持っていても、人間力を発揮できるかどうかが最重要です。技術的なことをきちんと教えていくことも当然大事で、勉強をしていく必要性もあります。
現在の経済・市場環境のなかで成長していくのであれば、やはり教育もそれなりに平準的に行き渡っているんですね。ですから基本的には皆さん、「善」をもっているんですよ。
その教育プラス、人間としてどういう考え方を持ち、どんな生き方をしているのか。たとえば感謝の気持ちを持っているかとか、ルールを守るかといった、そんな当たり前の道徳的なことが大切になってきます。
やろうと思えば誰でもできることだけれども、誰もそこまでやらない。その域まで注力していきます。
要は、真面目にやっていこうということです。でもこれって口で簡単に言いつつも、なかなかできないと思うんです。私もその部分は十分にはできてはいません。
ヒューマン・スキル、すなわち人としての考え方を正しい方向にもっていこう。こういうことを全員が共通認識できれば、ベクトルも自然と同じ方向に向きますよね。
ゴールのイメージさえ明確にしていれば、あとはそれぞれが持っている得意な力を自由に発揮していける、そんな環境ができればいいと思っています。
しかし起業してから数年間は、そういったビジネスプランを実現できるような道がなかったんです。免許を取れとか、勉強をしろとか、こんなゴールのイメージを持つといったテクニカル的なことは、ほとんど言った記憶がありません。
みんなのほうが私よりも頭がいいんだから、あえて言わなくてもわかるだろう。そんなふうに思っていました。
● ヒューマン・スキルについて、江見社長がご自分で心がけていることはございますか。
やはり感謝の気持ちを持つことですね。日本語には「漢字」という表現があり、感じの良い漢字を一つ選べと言われれば、私は「感謝」という言葉を選びます。そして感謝の気持ちのなかには、愛情も含んでいいと思っているんですよ。
感謝する気持ちさえあれば、高いモチベーションを持てますし、生きていて幸せを感じやすくなると私は思います。
そういったさまざまな観点から見てみても、非常にオールマイティーで万能な言葉ではないでしょうか。ビジネスのなかでも当然、最強のキーワードになると思いますね。
私もビジネスパーソンじゃないですか。「頑張りましょう、人間として正しいことをしましょう」といった精神論のようなことを、私のような若輩者が語ってもいいのか・・・そんな疑問があるんです。神父さんでもお坊さんでもありませんから。
もちろんそういうことも大事ですが、その思想を広めようと活動しても理にかなった結果にはなりません。だから人として正しい考え方と経済合理性をしっかりとリンクさせていかなければなりません。人としてもこういう考え方でいけば、みんな幸せになりますよね。
でもさらにいいのが、そういうふうに生きていくと、経済合理性にかなってお給料も徐々に上がり、物質的な環境も変わってくる―この2つが一緒に向上していくのがベストです。