【増永】 これまで経営していて、ベンチャー企業ならではの学んだところや経営のコツなどあれば教えてください。
やはりベンチャー企業の強みというのは、「スピード」だと思うんですよね。スピーディーにどんどんやっていく。もちろんその分失敗も多いのですが、致命的な失敗をしない程度に臆することなくチャレンジすること。こうした姿勢が、ビジネスの拡がりにものすごく影響してくると思います。
もし1つひとつ進めるのに検討し過ぎてしまうと、前へ進めなくなり、いつしか足が止まってしまうんです。動けなくなってしまったら、ベンチャー企業としては致命的だと思います。
最初の頃、ネットスーパー事業はそもそもダメだとずっと言われていたわけですが、逆の発想をしてみました。もしそのダメな流れを変えたら、ひとり勝ちだなって(笑)。こうしたマインドがあれば、成功しやすいかもしれませんね。
石橋をたたき過ぎてしまうと、会社の成長にストップがかかるか失敗の傾向が強い。そんなふうに私は感じています。
だからこそ、果敢にチャレンジして失敗したとしても、怒ったり止めてしまうのではなくて、いかにして次は失敗しないようにするか。どうすれば失敗を防げるかということを考えるのです。経験を積んでいけば、こういう発想が自然にできるようになっていくと思います。
あとは自分のいる事業以外の方たちとの交流、情報交換などもいい影響があるように感じます。他の事業の状況を聞くことで、自分が向かうべき事業の目的地が見えてくるとか・・・それまで無関係だと思っていたところで、実は面白いつながりなんかを見出せることもあるかもしれません。そういうアイディアとかも浮かぶ機会ではあります。
個人的には、歯科医院や不動産の方からいろいろなお話を伺い、コンサルのようなことをしているんですよ。もちろんお金はいただきませんが、話を聞いた上で「自分であれば、こういうことをしますね」とか提案しているんです(笑)。
話をしたり考えたりしていくと、次第にお互いに何か見えてくるものがあったりします。それは時に、うまくいかない要因だったりもします。そういうものが自然と見えてくると、改善案も考えられるじゃないですか。
● 上場についても前向きにご検討されているということですが。
そうですね、やはり事業を継続していくからには、未来に残せる会社を作っていきたいと思っています。今すぐはもちろん難しいですが、将来的には上場してきちんと形として未来に残していきたいと思います。この思いはずっと同じです。
● そうしましたら、石那田社長の好きな言葉があれば教えてください。
近江商人が掲げる、三方よし「売り手よし、買い手よし、世間よし」の理念ですね。
売り手だけでなく買い手のことも思い、さらには社会貢献という点まで考えられており、この全体のバランスがきちんととれることで、はじめてモノが売れると。一方が得したり損をするようでは、正常な商売とはいえないということですよね。誰もが利益を享受できるビジネスを成立させれば、自然と広がっていくようなビジネスになるのではないかと思います。
私自身、ビジネスを展開する際、この三方よしの考えから外れていないかを都度確認しながら進めているんです。こうしたことを意識するようになったのは、出前館時代になります。
出前館を使うユーザーにとっても便利であり、出前館への加盟店の皆さんにとっても得を感じていただける、さらには出前館自体もクオリティが上がり利益を上げられる―こうなれば誰も損をしないし、何らかのプラスを享受できるような仕組みになれば、売り込まなくても自然と広がっていき、結果加盟店1万店舗まで拡大できたのだと思います。
これはまたさらに、「わらしべ長者」のような話になってきますけど、ベースとして三方よしの関係性が築けているからこそです。
そういう関係性を築けるように、常に考えて実現していく。他の企業さんと提携するときも、相手に大きく負担してもらうとか、自分たちが負担をするとか、高く見積もるなど、要はWin-Winではないビジネスは絶対にしない。これを心がけています。
余談ですが、この点を心がけすぎると社員に怒られることもあるんですよ(笑)。以前に大手さんからオファーをいただいて見積りを提出したのですが、それが安すぎると。当社としては正直なお見積りであり、値段よりも良いものを提供したいという思いのあらわれだったんですが・・・ちょっと採算を度外視し過ぎたようです。社員から、もう少し会社の利益を考えてくれと言われたものです。
とはいえ、こうした心がけを徹底することで、今のシステムのようにどこからも重宝されるような商品を提供できるし、たとえ大手さんが競合となってもベンチャーである私たちも十分に同じ土俵で戦えるのだと思います。
● お薦めの本を教えてください。
サイバーエージェントの藤田社長の著書『
渋谷ではたらく社長の告白』という本になります。
ベンチャー企業の経営者として、この本からは勇気をもらえるし、とても参考になります。ベンチャー企業の経営者の方にはぜひ読んでいただきたい1冊ではありますが、ただし良いところだけを見たらダメだと思います(笑)。失敗しているエピソードから学ぶべきだと。
私も出前館時代に体験した失敗から、いろいろと見えてきたものがあります。
起業本の失敗エピソードに自分をあてはめて、自分だったらどうしていくか―といった見方をするのはいいのではないかと思います。
成功したところだけ見て、同じようなことをやると確実に失敗すると思うんですよね。その成功は、その状況だからこそ成立したということもあるじゃないですか。あとはその人だからこそできた、とか。一方で、失敗体験というのはあまり制限がなくて、実は同じような状況で遭遇することが不思議とありませんか。
この本を読んでいても、「同じことがあったな」とか、共感ポイントがたくさんありました。
そして事前情報としていろいろな失敗談を頭に入れておくと、同じような場面に自分が遭遇したとき、思い出されてしかも少し修正した対応ができるようになります。こういうことが起きたとき、何が必要なのか・・・とか特に立ち上げ時なんて、右も左も分からないような状態ですから、見えるものも見えないことが多かったりします。
だからこそ、事前に分かっているのとでは大きく対応に差がでるというわけです。
しかし成功体験しか知らなかったら・・・実際に会社を立ち上げて成功体験がそんなにやってくるかというと、そうでもないじゃないですか(笑)。成功よりも失敗のほうが、多いのが普通だと思います。
● 最後に御社のビジョンをお願いします。
社名である「HINTO」ですが、「HINT」に「O」をわざわざ追加しています。これは「HINT OVER」というワードからきていて、「ヒントを超えた提案をしよう」という意味を込めているんです。
HINTというと、ヒントだけ与えられても結果は変わらないことが多いんですよね。ヒントから有効に作用するように・・・ヒントを超えて実際につながるような、そうした提案をしていこうということです。
単に言われたものを作るのではなく、「こうしたらもっと活かせますよ、ビジネスの成功につながりますよ」とか、ヒントの先にお客さまを導けるような提案力のある会社にしていきたいと思っています。
当社は将来的には上場を目指していますが、まずはそこよりも単に一過性で流行を生み出すのではなくて、世の中に浸透していきいずれ「当たり前」になるような世界を築いていきたい。その世界を築き上げるためのシステムを作り出すことが、HINTOとしての使命であると思っています。
【完:5/5】
次号:株式会社サムシングファン 代表取締役 薮本 直樹 氏