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【増永】 御社独自の制度などあれば教えてください。
評価制度でしょうか。当たり前のことではありますが、能力のある人が会社の中で正しく評価されることを、会社の文化として確立できるように注力しています。
よく見られる成果主義に近い形のものを導入しているのですが、現状は新卒者よりも中途で入社してきた社員が多いんですね。そうなると、期待値とかそういうもので報酬が決まってしまいがちです。
このあたりがあまりきれいに機能していないことは、私自身も感じているので・・・そのあたりをもっとクリアに、そして社員のやる気も含めて正当な待遇を提供できるように少しずつではありますが、整備を進めています。
● 新卒採用については、これから注力されるのですか。
そうですね、周りからは強く勧められてはいるのですが、事業的に難しく思っています。
ご葬儀を扱う中で、人を亡くしたときの気持ちを想像できるか―という点を浸透させるのは、まだ新卒の若い人たちには厳しい要求だと思います。どんな言葉をかけてあげるのか・・・こういうのって、マニュアルどおりではなくて、その場その場で本能的に感じたことが言葉になると思うんですよ。
そういうイマジネーションは、やはりそれなりに人生経験を積んだ人ではないと、難しいのではないでしょうか。
とはいえ、まったく受け付けないという方針でいるわけでもなく、教育の工夫だったりいろいろとやってみる価値はあると思っているんです。新卒社員の比重を高めることは、当社の課題でもあります。
● ありがとうございます。それでは好きな言葉があれば、教えてください。
「棺を蓋(おお)いて事が定まる」という言葉です。この言葉は、人間の真価はその人が死んでから初めて評価される、決まるといった意味です。
経営者には、目先の利益を取るべきか取らざるべきか、などと常にいろいろと葛藤があると思います。あるときは、品質よりも利益を優先しなければならない。またあるときは、利益よりも人を育てなければならない。頭の中では本当にやるべきことが分かっていても、その状況によっては他を優先しなければならないときもありますよね。
そうした局面でも、「自分は何のために経営をしているのか」ということを絶対に忘れてはいけないと思います。いろいろな誘惑があっても、それらに負けないよう自分の軸をぶらさず、決めたことを粛々とやる。
そうすれば、自分が死んだときに正当な評価をされると思うんですよね。そのためにも、軸をぶらさずに生きていきたいです。
● 最後に御社のビジョンをお願いします。
数字で分かりやすく言えば、今期の売上げは約41億円ですが、年間売上500億円を目指しています。業態的に数字で表現するのは抵抗があるかもしれませんが、社員に規模感を分かってもらうためにも、数字できちんと明示しているんです。
葬祭業というのはまだまだ不透明な部分が多く、さらには葬儀をしない人も増えているのが現状なんですね。ということは、この業界自体が軽視されていく傾向も否めません。
やはり人は、「死」を積極的には考えたくないという意識が強くあります。その中で葬祭業の存在感を出すことは、そもそも間違っているような気がするんです。この業界でも上場している企業はありますが、上場企業でさえ業界全体に占める割合は1%未満ほど。一般的な業界と比較すると異質と言えるでしょう。
しかし生きているかぎり、「死」は身近なものですし、意識することは大切だと個人的には考えています。人は終わりを意識するからこそ、今の生き方を変えることができる― そう思うんです。
だからもっと皆さんに身近に考えてもらえるためにも、葬儀業界から情報を発信して影響を与えられるような存在になっていかなければならない。そのためには、1%のシェアでは不足していて、それであれば売上げ規模として500億円は最低限必要ではないかと思っているんです。
海外では、15%以上のシェアを持つ事例もあります。そうしたモデルも研究しつつ、私たちも目指していきたいと思っています。
そして、どんなに会社が大きくなっても、当社で葬儀を終えた家族の方々には、「家族は大切」と改めて感じていただけるようなサービスを提供していきたいですし、その想いをつなげていけるようなサポートをしていきたいですね。
単なる葬祭業で終わるのではなく、人の心にやさしく触れられるような、人・家族とのつながりの大切さを伝えられるような・・・そんな葬儀社として、邁進したいと思います。
【完:5/5】
次号:株式会社HINTO 代表取締役 石那田 諭 氏
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