【増永】 御社の成長につながる部分を教えてください。
葬儀についての考え方を転換したことが大きかったと思います。私自身、それまで葬儀というものを経験したことがなかったものですから・・・このビジネスにおいては、世の中の人口が今後どうなっていくかというトレンドを見ることも大切だと思います。
しかし私は、「人の感情」の部分に焦点をあてていったのです。「こういう商品であれば、きっとお客さまも納得する、自分だったらこんな葬儀をあげたいと思う」という、ビジネスにおいては当たり前である、お客さまの気持ちになって考えていくことを改めてベースにしていきました。
従来この業界では、お客さまには選択肢がなかったのです。つまり、葬儀社としては安い商品を売りたくない。家族に焦点をあてることも考えない。商品を分かりやすくすると内容が透明化され、簡単には単価を上げられないのでそれもしたくない。
さらに言えば、1日1組と限定にしてしまったら、2件目の問い合わせがあったときはその方からご依頼いただけなくなる事にもつながるので、そうした商品構成にもしたくなかった。どれも葬儀社側の一方的な思惑の上で成立していたのです。
本来は、お客さまにとってはこんな商品があったほうがいい―と葬儀社は分かってはいたけれど、自分たちの利益には結びつかないので誰もやりたがらなかったわけです。
そういう業界でしたので、私たちが注力しているようなお客さま視点に立って商品を構成する、お客さまの気持ちに焦点をあてること自体が、非常に珍しくもあり革新的でもあったと思います。この発想の転換が、今の時代にうまくはまっていったように感じますね。
もちろん、データを収集しそれに基づいたマーケティングも積み重ねていきました。そして同時に、地域を越えた展開を視野に入れていったのです。全国区に展開したいという思いがあったので、それを実現するためにはどんなマネジメント、マーケティングが必要なのか、いろいろと検証を繰り返していきました。
こうしてあらゆることをやってきたわけですが・・・結局のところ、会社をどうしていきたいかという「想い」の強さに勝るものはなかったかもしれません。そもそもトップが想いや理念を打ち出していかないと、社員はついてこないだろうし。そうした点で、徐々に私の想いや理念に共感してくれる社員が増えてきたことが、成長につながっていったのかもしれませんね。
● 現在、フランチャイズ加盟店は何社ほどになるのですか。
16社です。現在は、加盟店を増やすことは積極的に進めておらず、直営店を増やすことに注力して、収益の柱を作っています。
そして全国で「ファミーユ」のご葬儀を執り行っていただける協力店が約170箇所あります。
● これまでの経験を経て、経営者として学んだことをぜひ教えてください。
前職の金融機関では、目に見える商品が無くても、取引額の大きさによって、手数料や利益を積み上げることが可能でした。
それに対し、葬祭業界でのビジネスというのは、あくまで葬儀という商品ありきなので、製造業のように一つひとつの葬儀というサービスを提供し、お客さまに満足いただいたことに対する対価を積み上げていくことが重要なのだと、最近特に強く感じます。
一時期は、この業界の特徴を無視して、他のベンチャー企業の社長に競うように、一気に売上を積み上げていくことが経営者には必要なスキルであると思っていました。けれど実際に経営を進めてみると、一つひとつのサービスを大切にし、その対価を積み上げていくことがふさわしいビジネスモデルであることを痛感したんです。この業界でのウルトラCは、難しいですよ(笑)。
しかし私はこの業界で人に価値を与える―ということを選択しました。そして価値を与えるためには人も品質も育てていかなければなりません。
理想だけではやっていけませんから、地に足をつけた成長を遂げる必要があります。そこから、社員の成長や品質の向上、そして会社の拡大など、あらゆる面においてバランスがとれてくるのではないでしょうか。今は、そのように感じています。
経営者としては、やはり焦ってくると「もっとアクセルを踏まなきゃ、急成長が必要だ」なんて思いがちですよね。それができるビジネスも当然ありますが、この業界、ひいては私自身はそういう成長の仕方は目指すところではないと思っています。確実に積み上げていくことの必要性を意識しながら、経営をしているのです。
【続く:4/5】