【増永】 高見社長が現在の会社の代表になられるまでに、どのような人生を歩まれてきたのか教えてください。
29歳までは外資系の金融機関で働いていたのですが、宮崎県の実家は葬祭会社を経営しており、30歳までには実家に戻るという約束をしていました。
実家の事業規模は50名ほどでしたが、働いていた金融機関も同規模だったんですね。そういうこともあり、「経営手法も学べるかもしれない」という気持ちも抱きながら、経験を積んでいました。
しかしながら、金融機関での実際の仕事は資産運用などで、経営手法を学ぶというよりは、プレーヤーとしてたくさんの経験を積ませていただきました。そして約束の30歳を前にして、実家には戻らずMBA取得のために留学。当初の約束どおりとはいきませんでしたが、31歳になり、帰国後は常務として父の葬祭会社に入社したのです。
● もともと高見社長は、後継者としての生き方を意識されていたのですか。
そうですね、私には兄がいるのですが・・・彼は私よりも出来がよくて(笑)、子どもの頃から「理系に進む」と明確に意思表示をしていたんです。よって、父親も必然と私に対して「跡継ぎになってほしい」と思っていたんですね。そうした父親の思いは、私が小さい頃から刷り込まれていましたから、何の違和感もなく「自分がこの会社の跡継ぎになるんだ」と覚悟していました。
約束どおり父親の会社に入社したのですが、結局2000年7月には新しい別会社の代表に就任。事業内容は実家同様に葬祭業でした。
当時、実家の事業は急激に業績が落ちていき、「食い止めるためにも新たなビジネスを始めなければならない」という雰囲気になっていました。
そんな中、このエポック・ジャパンという会社の経営に携われる機会がやってきたのです。私としては、どんなチャンスでも逃すわけにはいかない・・・という焦燥感みたいなものもありました。
エポック・ジャパンには当時10名の株主がいて、社長を受けることを条件に11番目として私は参加したんです。ところが、ビジネスモデルの精度があまり高くなく、「安い商品を売りましょう」という点以外には明確な戦略はありませんでした。
フランチャイズに近しい形で展開していたのですが、だんだんと足並みが乱れてきて、お金もなくなっていきました。そんな状況でしたので、決して楽な道でもなく・・・資本金を集約してビジネスモデルや戦略の転換も検討しなければならない―最初の1年間はそうした形で調整役に従事していたのです。
実家の売上げは落ちるし、新しい会社の経営も思い通りにうまくいかない。本当に大変でした。
私自身、業界経験がほぼない状態でトップに立ち、一方で周りの経営陣はすでに母体のしっかりした状態で葬祭業を営んでいる、いわば同業の先輩たちばかりでした。そうした先輩方を束ねるというのも、非常に難しくて苦労しましたね。
当然のことながら、1年あまりで会社は行き詰まっていったんです。
● 行き詰まった結果、変革を起こしていかれたのですね。
はい、まず商品を変えて、現在の「家族葬のファミーユ」に近しい形へとブランドを変えていきました。
● それでは現在のビジネスについて教えてください。
現在のビジネスは以前同様、葬祭業です。従来の葬儀業界は、金額やその内容が不透明であっても、お客さまが葬儀の価格交渉をしたり、複数葬儀社の見積りを比較したりもせず、葬儀をご依頼いただけてしまう業界でした。なぜならそこには、各地域のつながりや昔からの信頼関係なんかが強く影響していたと思われます。
ところが、まさにそのやり方をしていた父親の会社はうまくいかなくなり・・・「なぜ従来のやり方がうまくいかなくなったのか」を考えるようになったのです。そこでお客さまとなり得る消費者の方々に直接、「葬儀」に対しての意見を聞いてみました。
すると、「葬儀とは、普段考える商品ではない」という回答が多かったんです。
葬儀社として私たちは、ご葬儀に関する情報を発信し、故人やご遺族に対するさまざまなサービスを考え、戦略を組んでいます。けれど実際には、思っている以上にお客さまには、葬儀に関する情報が伝わっていないということが証明された結果でもありました。
そしてこの他、この調査で明確になったことは、価格に対する商品内容の不透明さです。
これをもう少し分かりやすく、明白にする必要性があると考えました。もちろん、専門用語を羅列するだけで終わらせたら意味がありません。結局、お客さまにとっては馴染みの薄い業界のことですから、専門用語が並んでいても、それが本当に必要なのか不要なのかの判断も出来ないわけです。
そこであえてシンプルに、5つの総額プラン商品を用意することにしました。なおかつ、その総額も従来の費用の半分程度に抑えて提供できるような形にしたのです。また、「家族を中心に執り行なう葬儀」という点に焦点をあて、サービスを提供することを考えました。
● なぜ「家族」に焦点をあてたのですか。
従来の葬儀は、「儀礼をおもんばかり、生前お付き合いした方に対して、きちんとご挨拶をする場を設けなければいけない」― つまりは、「それなりの規模のご葬儀を執り行ない、祭壇もお返しもそれぞれスケールに合わせるべき」と考えられていましたし、葬儀社もそのようにお客さまへお伝えしていました。
そうなると、ご遺族にとってはもともと精神的な負担が大きい中、さらに費用的な負担が覆いかぶさってきます。
「大切な方を亡くし、いちばん悲しい人たちが、葬儀に振り回されることなく故人を想い、お別れの時間をご家族でゆっくり過ごしてもらいたい」―そういう思いから、葬儀規模の縮小、それは家族を中心とした形へと発想を変えていきました。
ご家族中心であれば、周りに見栄を張る必要もないし、序列もさほど気にすることはありません。結果、費用も抑えられ、商品もシンプルで分かりやすいものとなったのです。余計なことに気を取られることもないので、ご家族でゆっくりお別れができます。
● その点についての具体的なサービスを教えてください。
全国のファミーユホールでは、1つの会場を貸切り、ご家族中心の葬儀を執り行なうことが可能です。
今は、1つの建物内にいくつかの式場があり、同時に複数の葬儀を行なえる場所が多くあります。1日1組に限定することで、他のお式のご葬儀社やその関係者を気にすることもなく、ご自宅にいるかのような気持ちで、ゆっくりと故人を偲び、送り出していただきたい。そんな想いが込められています。
こうして、シンプルなプランで分かりやすくしたこと、価格を従来の半分に抑えたこと、ご家族でゆっくりとお別れしていただくために、1日1組という葬儀業界ではなかなか取り組みづらい手法をとっていることが、私たちの差別化になります。
さらにこのシステムをフランチャイズ化して展開していくというビジネスモデルを、12年ほど前から実施しています。
【続く:1/5】