【増永】 渡邉社長が経営者になられて継続されていることなどがあれば教えてください。
経営者になってからというわけではありませんが、「未来ノート」というものがあります。これはスケジュール、本日のアクション、昨日のアクションから学んだこと、本日の反省と感謝など、2週間先のことや未来のことをノートに書いているんです。これを25年以上続けていて、トータル270冊を超えています。
たとえば明日のキャッシュフローとか、いろいろと考えなければならないことがあるじゃないですか。そういうのを私は未来ノートで行なっています。それ以外にもいろいろと書き、1冊100ページあるノートを1ヶ月で埋め尽くすんです。
25年間1日も休まずに続けていて、このノートのページが埋まれば、会社はつぶれない―そういう自己催眠をかけています。これを書けば、会社は絶対につぶれない、と。
こうした目に見える何かを自分で作り、必ず実行する。たとえばイチロー選手であれば、グラウンドへ入るときは左足から入ると決めて、それを続ければ絶対にヒットを打てると決めているといいます。
こういうのが大事なんです。自分の行動に対してリンクさせ、自分が何かリスクを負うとき、一見誰でもできることに対して、継続することで大丈夫だと自分を暗示にかけられるような行為は絶対に必要。
経営だってたくさんのリスクがあるわけで、よい表現ではないかもしれませんが、ある意味、賭けですよね。うまくいくこともあれば、つぶれることもある。不確定なことに対して自分自身が100%自信を持つなんて、普通は無理です。でもノートに書くことは誰だって絶対にできますよね。
100%自分ができることに対して、自己催眠をかけます。その結果が、未来ノートです。私は1ヶ月で1冊埋まるくらいに書き込んでいますが・・・管理職にもやらせていて、1人として同じペースでは埋まらないですね。この決定的な違いは、恐怖心なんだと思います。
話はそれますが、私はノンストレスで暮らしています。先日、ストレスチェックというものを試したのですが、人間じゃないと言われたくらいです(笑)。人間というのは、誰でもストレスを持っていて、経営者であれば100レベルのうち80〜90はあるのが一般的な結果のようです。そんな中、私の結果はゼロに近いものでした。
「このノートが埋まらなければ会社はつぶれる」という暗示をかけてしまっていますから、もし未来ノートをやめてしまったら、おそらくゼロだったストレスレベルも急上昇して、5年もすればメンタル不全で立ち直れなくなるかもしれません。それぐらいの恐怖心を持ち、日々続けているのです。
● 書かれる内容は決まっているようですが、それらに共通することなどはありますか。
人のためにつながることですね。もし今、「人のためになることを、何個くらい実行した?何個くらい予定している?」と聞かれても、答えに困るじゃないですか。普通は考えていないと思うのです。私はこれを月に5,000個やっています。1日およそ150個から200個を実行している計算です。
やることを全部ノートに書いて、さらにパソコンに打ち込む。まず朝のうちに100個を書き出します。全部人のためにやることです。そしてすべて実行する。それはたとえば、御礼のメールでもいいんですよ。社員に対して御礼メールを送る。これを100通やるとかね。御礼メールを送れても、100通はなかなか難しいでしょう。こういうことを習慣にすることが大切です。
普通経営者は、いちいち御礼のメールなんて社員に送らないですよ。だけど私はノートを意識して習慣化されているので、必ず実行します。今日一日で出会った人全員に、御礼メールを送るのです。こうしたことを10年も続けていると、自分の周りの景色が変わりますよ。
1日10個しかやらない人と、1日100個やる人がいれば、10年後にはそれは雲泥の差になるのです。これが未来ノートで体現されています。だからノートが7割しか埋まらなければ、私の7割しかやっていないということ。1日で見れば7割だけど、10年後にはものすごい差になるんです。
● 書籍にもなっていますね。
本が出て初めて社員が、私が仕事をしているとわかってくれたようです(笑)。
社員も未来ノートを書いているわけですが、実際にやってみると毎日書くことがどれだけ大変なことか分かるんですよね。
どれだけ会社の成果が上がっても社員が納得しない限り、どうして成果が出ているのか、成長できているのか不安でもあるようです。だから、こういうことをやっているから、会社は成長しているんだということを社員に実感してもらうためには、書籍など第三者によって伝えられることで、共感とか協調性とかが生まれていくんです。そういう点で、書籍化は社内にとっても大きな影響となりました。
● では尊敬する人物を教えてください。
最も尊敬する経営者として、京セラの稲盛さんを挙げます。私の経営の原点は、稲盛さんによる盛和塾でした。ここで理念や哲学を勉強して、今があるのです。
私は自分の時間を30%くらい割いて、会社以外の場所で哲学の話などをしています。自分の利益よりも利他の精神で経営をすることの大切さを稲盛さんを通じて学び、実践しているのです。
● 好きな本を教えてください。
デール・カーネギーの『道は開ける』という本が自分のバイブルとなっています。この本に書かれている悩みを除く方法がすごくシンプルで、分かりやすく、14歳のときに読んだのですが、今でも参考にしたりしているんです。
たとえば、「ミスをした、どうしよう・・・」と思い悩むことがあったとしますよね。でもそう思うこと自体、単に暇なんです。悩んでいる時間があるじゃないか、と。カーネギー的には、「今日一日の枠の中で生きるとは、朝起きたら新聞を読んでトイレへ行って、犬小屋を作って、掃除をするとか・・・1日に休む間もなくスケジュールを組んで、眠くてしょうがなくなったら寝ろ」、と。
それを読んで、すっとしたんですよね。それからは、朝から晩まで分刻みで予定を入れています。こうしたスタイルになって、悩む暇がなくなりました(笑)。そしてこの習慣が未来ノートへとつながっていったんです。最初はその日のことを書き綴り、次に未来のことを書くようになった―こう進化しています。
いろいろな本を読んでいますが、『道は開ける』が私にとって影響を与えた1冊なのです。
● 好きな言葉を教えてください。
利他の心です。これはまさに稲盛さんの影響です。
【続く:4/5】