【増永】 採用予定人数も多く、すでに2,000人規模となっている社員の方々を、どのようにマネジメントされているのでしょうか。
「倫理の軸」というのを私は持っています。海外の社員も200人ほどいるのですが、彼らを日本人がオペレーションするというのは、ものすごく難しいです。だから、性別・年齢・国籍が関係しないオペレーションの軸というものを、「Policy&Philosophy」としてまとめています。英語版もあるので、社員全員が共有できるようになっているんですよ。
会社としての軸を設定して、これに基づいてマネジメントしていけば、大きく外れるようなことは起こりません。Policy&Philosophyを正として見ているので、ノーと言わないんですね。
もう1つ重要な制度があります。コア制度というもので、家族関係の発想をもとにした、組織の垣根を越えて社員同士が親子の関係になる制度です。通常の組織であるリアル組織とバーチャル組織のコアというものがあるんです。
コア組織では、上位コアは下位コアに対し、自分の子供と同じように接しているのです。私は親であり、子どもにあたる社員は50人くらいいます。その子どもの下もさらに子どもにあたる社員が5人から10人いて、ピラミッド型の階層になっており、会社が一つの家族という考え方です。
ではリアルとコアでは何が違うのかというと、たとえば普通の会社であれば、長期に渡って体調を崩すような社員がいれば、戦力外と見なされリストラが実施されることもありますよね。でもそこに親子の関係が入っていたらどうでしょう。
もし子どもの体調が悪ければ、見放さずに親は子どもを守るはずです。
リアル組織としては、リストラも然るべき判断であるかもしれませんが、私自身はこうした組織関係は間違っていると思うんです。
会社は家族であるべきだと思っています。
だから排除するのではなくて、新たな場所を提供するのです。そう考えることにより、長期的な休養が必要であるような病気になれば、その社員を守るという制度を作りました。私の子どもでもあるわけですから、きちんと世話をしなければなりません(笑)。
● その他、御社ならではの制度や経営手法などあれば、ぜひ教えてください。
特徴的なのは、先ほどのコア制度にもつながる部分ですが、メンタル不全の社員を辞めさせることなく、継続して働ける環境を提供するということでしょうか。メディアにも取り上げられる内容なのですが、具体的にいうとメンタル不全者のための組織、FDO(Future Dream Operation)室というのを設置しています。
体の状態が良くなってすぐに現場に戻っても、無理をするとまた悪化する傾向があります。だから現場に戻るまでの中間組織を作り、まずはそこで以前のように働ける状態になるまで勤務してもらう。ここでケアしつつ、ゆっくりと現場復帰してもらいます。
この制度を設けてから10年ほどは、社員は制度の良さにはあまり理解がない状態でした。しかし実際にうつになってしまう割合は、日本人は平均4.5%ぐらいあるそうです。だから100人規模の企業があれば、4.5人が病気になる可能性があるということ。決して低い数値ではないと思います。
企業が継続していけばそれだけ病気になっていく人たちの確率も上がっていくわけで、もしそうなったときに、「病気になったなら不要です。さようなら」なんて対応をしていたら・・・放ってはいけない事態だと思うんです。
そういう人たちをちゃんと受け入れていかなければなりません。まずは、メンタル不全にならないような工夫、たとえば時短勤務や在宅勤務・・・さまざまな受け口を作り、働き方も多様化させているんです。そしてもし病気になってしまったとしても、復帰できる場所を作り、継続して働いてもらいたいと思っています。
やはり社員が病気になるのは、会社にとっても辛いことです。だから優しくしたいと思っています。私個人は、日ごろは厳しかったりするんですけどね(笑)。
もちろん病人だけに対してではありません。たとえば台風上陸で天気も荒れ、交通機関もマヒしそうだというときには、早めはやめに帰宅指示を出します。社員もそれに従い、早々に帰宅したりしていましたね。こういうことも大事だと思うんです。日ごろから頑張って働いてくれている。この常日頃の頑張りが、こうした事態のときのための預貯金になるのだと思うんです。
● そうした経営をしようと実践されている方は、なかなかいないように思います。
繰り返しになりますが、会社は家族ですから。
私は自分の思うように自分の経営をしています。MBAを取得しているわけではありません。これは効率を重視しているので、リストラもその手法の一つとして良しとされているんですよね。私のポリシーに反することなので、あまり勉強したいとも思いません(笑)。
私が意識しているのは、自分が家族だったらどうか―という軸で考えることです。たとえば、家族であれば何かあったときのことが心配だからいろいろと考えるじゃないですか。たとえば奥さんには貯金をしておいてくれと言っているし、あまり無駄遣いもしません。何か起きたときのことを考えて行動するのは、普通です。これは会社でも同じだと思うんです。
良いときこそ、ばっとお金を使うのではなくて、たとえば子どもの未来のために貯蓄をしておくとか・・・こういう感覚が普通ですよね。
私が経営の中でやっていることというのは、単に普通の家族に当てはめていることなのです。特に難しくて特殊なことをやっているという感覚はありません。
不景気が続き、日本はますます厳しくなっていくでしょう。たとえば学生にとっては、企業側が上から目線で採用をしている状況だったりしています。会社説明会で私が熱く喋ったりしているのですが、どうしても上から目線で喋ってしまい、人を選ぶとかこういう人材は要らないとか偉そうに言ってしまうんですね。そうすると、学生と会社との間に不信感が生まれてしまうこともあります。
そうではなくて、これから厳しい時代が続くからこそ、会社が社員を守るとか、そういう考え方にならなければなりません。
経営者の中には、不景気になると人がたくさん来るから、別に辞めさせたって問題ないんだ、という考え方を持っている方もいるでしょう。
それも考え方の1つかもしれませんが、私は「辞めてほしくはない」ということを会社で宣言しています。
会社を経営していると、必ず人は辞めていきます。それでも私は辞められるのが嫌なんです。そう考えて経営をしていることを、社員の前で話しているんです。この話を聞いて、それでも辞めるというのであれば、それは仕方がない―こうした話を朝礼で話します。
まずは経営者である私が一生懸命、渾身の思いを込めて話す。そこまでしても、「社長、それは私の考えとは違うと思う」といって辞めていってしまうのは、止めようがありません。これはある種、私の能力不足であるとも思っています。
だけど、「もしあのとき社長の思いを聞いていたら辞めることはなかった」―というのがいちばん悔しいですから、この点については、私は何度も繰り返し社員に伝えているんですよ。
【続く:3/5】