【増永】 社外に対する取り組みとして、会社見学・視察を積極的に開催されているようですが、どのような目的意識があるのかぜひ教えてください。
もちろん、そうしたニーズがあるからということも当然ですが、もう1つの目的は自社の「社員研修」です。
社外の方に見学に来ていただくということは、本社も工場もきれいにしなければなりません。でもそういう物理的なものだけではなく、見学対応そのものを社員が担当するのです。つまりは、お客さまが見学する中、社員が自分の仕事についての想いを語ります。社内では『自分語り』と呼ばれています。
しかも一組のお客さまに対して専属で付き添うのではなく、行く先々でその部署の社員が語るのです。説明するのが苦手とか社歴とか、そういうものは一切関係なくて、平等に交代制でやっています。
● 社員の方がそれぞれ担当されることで、どのような効用がありますか。
お客さまからよく言われるのは、「自分の仕事や会社の考え方を、自分の言葉で語っているので、より心に伝わってくる」ということです。
決して上手に話せるわけではありません。だって上手に話すことを奨励してなんかいませんから。人によっては緊張しすぎて、足が震えていたりしますから。それより本当に日頃自分が考えていることを素直に話すことが仲間から賞賛されるのです。
要は、日ごろの自分の考えの深さが試されるのです。
しかも、海外からのお客さまについては英語で説明してもらいます。
みんながみんな英語が得意というわけでもないので、自分の伝えたいことを英語の得意な社員に訳してもらい、そこにカタカナをふって本番に臨む。そんな感じです。
普通であれば、20人とかのお客さまの前で話せない英語を喋るなんて、恥ずかしいと思うんですよ。しかも、他の社員がその場にいる中での説明ですから。でも、「自分がやらなければならない」となってしまっているので、諦めて一生懸命話します(笑)。その姿勢が素晴らしいのです。
たとえ英語が下手くそでも、ISOWAビトはみんな精一杯語るんです。そのひたむきさが人の心を打つのです。ある意味それは当然ですよね。
見学に来られる方の中には、他社さんの工場見学をされている方もいらっしゃいます。
比較してみてどうか感想を伺ったところ、他社さんはバイリンガルの若い女性が説明したり、プロの通訳の方が説明してくださるそうなのですが、プロでもなんでもないど素人の当社の「自分語り」のほうが、「感動した、とても良かった」と言ってくださるのです。
そりゃ、そうですよね。ただ決められたことを機械的に毎回『説明』するだけと、各自が本当の自分の想いを自分の言葉で語るのでは、天と地ほどの差があります。
● それでは、磯輪社長の好きな本を教えてください。
影響を受けた本としては、先ほど挙げました、『なぜ会社は変われないのか』です。その他、花王の前会長である常盤氏等の共著となる『モノづくり原論』という本になります。
● 尊敬する人物はいらっしゃいますか。
上杉鷹山ですね。『漆の実のみのる国』という、上杉鷹山の生涯を描いた本があります。江戸時代中期の米沢藩主の話ですが、この時代に革新的な風土改革を実践したなんて・・・非常に感動しました。
風土改革とは、人や組織を変えていかなければならないじゃないですか。思っている以上にしんどいことですし、きれいごとだけでは実現できません。人間のどろどろしたところと真正面から向き合っていかなければならない。そういう苦労というか、プロセスは、私自身も経験してきていることなので、すごく共感できたのです。
● 最後に、御社のビジョンをお願いします。
「世界一社風のいい会社は、世界一のお客さま満足を提供できる」ということを実証していきたいと思っています。
私がISOWAに入社した頃、ある勉強会に通っていた時期がありました。そこで学んだのは、「社長の仕事は2つしかない」ということ。
1つは、会社が存続できるような戦略を立てること。そしてもう1つは、社員が生き生きと働ける組織風土を作ること。この2つだけだということでした。
あのとき学んだことが今でも私のベースになっているのですが、風土改革を始めた頃は「風土と戦略は別のもの」と認識していたんです。だけどいろいろと経験を積むことで、実は風土作りは戦略の大きな部分を占めるものなんだ―と思うようになりました。
だからこそ、こうした風土をベースにして、世界一社風のいい会社を目指すISOWAらしい、明らかに他社とは異なる製品やサービスを開発して提供することで、お客さまに幸せを届けたい。
我々は、これまでは「段ボールを作る機械を作る」会社でした。でもこれからは「幸せをつくる段ボール機械をつくる」会社になりたいのです。
これまで、私はもちろん、社員のみんなも一生懸命努力して今日までやってきています。こうしてみんなが同じ方向を向いてできるのは、「改革としてやってきたことが、必ず結果につながる」ということを実感したいという思いを、すべてとはまだ言い切る自信はありませんが、多くのISOWAビトが強く持っているからです。
今、少しずつこれまでの努力に対する成果を実感できるようになっていますが、これからも自分たちのやってきていることは間違っていなかった―と感じるようになりたい。そして自分たちが幸せになることで、お客さまにも喜んでいただける。この良いサイクルを、社員みんなと分かち合っていきたい、そのために今、努力をしています。
【完:5/5】
次号:株式会社浜野製作所 代表取締役 浜野 慶一 氏