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【増永】 御社の沿革をぜひお伺いしたいのですが。
2006年当時の日本テレコム(現:ソフトバンクテレコム)という会社の固定回線の加入取次ぎを行なっており、実績は当時から当社が一番で今もなお一番を維持しています。この会社をソフトバンク社が買収した後、孫社長に呼ばれました。
「NTTに対抗するこんなサービスを作る。そのために、日本テレコムでトップの売上げを誇るビジョンさんと提携して、打倒NTTを掲げたい」と、孫社長の社長室で熱く語られました。
これを聞いて、「もちろん、協力します」と答え、提携して実際に商品化を実現してきています。
たとえば、『おとくライン』と呼ばれる、今では素晴らしいサービスに成長したものがあります。ただなぜかソフトバンク社が新しいことを始めると、かっては、最初の2年くらいはなかなかうまく軌道に乗らないという事態が見受けられました。このサービスも順風満帆にはいきませんでした。
『おとくライン』とは、ソフトバンクテレコム社の通信設備を利用して、NTTの通信設備を通さずに電話できるというサービスですが、開始した当初は回線数も多く確保できて、予想を上回るぐらいに申し込みがありました。
ところが、いざ開通するとなったものの、一気に回線が止まり電話ができないという大事件が起こりました。開通しないから、私たちには一切お金も入ってこない・・・このサービス自体、成果報酬型でやっていたので、取次ぎだけではなくきちんとサービスが成立してこそ、それが成果と見なされることになっていました。
当然、他の代理店さんもお金をもらえない状態が続き、次々と皆さんはこのサービスから撤退していきました。そんな中、当社は最後の1社となりました。さあ、この先どうしようか・・・と考えあぐねていたとき、ソフトバンク社は「ビジョンさんが撤退するなら、この事業そのものを撤退する可能性もある」とまで宣言されたのです。
当時の部長、本部長が責任者となり担当していたのですが、彼らと「この事業をどうするか」ということを、ずっと議論しました。
その結果、あまり公にはなっていませんが・・・この事業に私は14億円を費やしました。
回収できないという大変な事態になっていたにも関わらず、なぜこんなことをしたのか。それは、「ここで止めてしまっては、日本の通信の未来のためには大きな損失だし、この事業そのものがとん挫したら、日本の通信も終わりだ」―とまで思っていたからなのです。
当時は担当責任者とも、「このまま14億円も突っ込めば倒産するかもしれないけれど、それでも日本の通信の未来のためにやりたい。お前ならどうする?」「社長がやるのであれば、やりましょう」、こんなやり取りがありました。
社内で結論が出てからは、どうすれば回線を開通できるのか―というロジック解明のためにソフトバンク社に入り、問題解決にあたりました。
それからは、申し込み時にお客さまから、「もしかしたら止まるかもしれませんが、そこも了承の上、申し込んでいただけますか」と許諾をもらったりしましたね。そこまでしておかないと、罪として訴えられる可能性もありますから。
こうしたリスクヘッジも行ないながら、サービスを継続していったのです。その結果、多くの申し込みをいただけるようになりました。
その後、開通するための何千種類ものパターンがあることが判明し、それにあわせた開通ロジックをひとつひとつ作り上げていったのです。今ではそのロジックも、ソフトバンク社の代理店さんにはすべて公開しています。
やはり業界全体、通信関連の商品やサービスのブランド力が上がっていくことは、長い目で見れば、私たちにとっても大きくプラスになるので、自分たちだけで独占していこうという考えはありません。まずはこのマーケットをきちんと形成していきたい―その一心で取り組んできています。
● その後、無事に開通されてサービス提供が実現されたわけですが、当時費やした14億円の回収はできたのでしょうか。
開通後は軌道に乗り始め、現時点ですでに回収済みです(笑)。しかし、当時は本当に瀕死状態でした・・・。とにかく日本の通信の未来を信じて思いっきりのめりこみ、無我夢中でパワーを注ぎ込んでいたので、「自分たちが道を切り拓くしかない」と強く決意したものです。
今のビジョンが、こうして通信に特化してサービスを提供できているのも、当時のこの取り組みがあったからこそであり、もしかしたらあのときが、事実上のスタートラインだったのかもしれないと思います。
● 御社が成長を遂げてきた過程の中でぶつかった、業界特有の問題などがあれば教えてください。
私たちがいる業界や不動産業界も一般的にそう言われていますが、人の入れ替わりが非常に激しいんですね。他の業界に比べ、なぜそうした傾向が強いのか。おそらく「誰でもできる」と思われがちなのが、1つの大きな要因になっていると思います。
ただ実際には認識違いをされている方が多くて・・・たとえば先ほどの『おとくライン』というサービスは、非常に難易度の高いサービスです。回線の開通事故を起こさないために、さまざまなノウハウやスキルが必要となってきます。
『おとくライン』のサービスを始める前までは、人の入れ替わりが激しく、離職率の高さはひどかったです。しかも単純作業的なものもありますので、そうなると人は飽きやすくなってきます。結果、優秀であっても、力を発揮する前に辞めやすい環境になっていました。
成果を上げられたとしても、人には「刺激が欲しい」という欲求がどこかにあります。そうすると、この仕事は自分じゃなくてもいいんじゃないか・・・と発想してしまうようです。そうして、新たな仕事を探しに去ってしまうのです。
ただ『おとくライン』のサービスに集中するようになってからは、社員の教育にもきちんと時間をかけるようになっていきました。商品知識が複雑になり、スキルを身につけなければ、簡単にはサービス提供や営業ができないという状況に変わっていき、誰もが簡単に参入できなくなっていったのです。そうなったことで、おもしろいことに会社への定着率も上がっていきました。
同時期に、会社経営に大きく影響した出来事が起こりました。オフィス内で利用されるコピー機の販売事業も展開しているのですが、あるとき、訪問販売法の内容が変更されました。クーリングオフ制です。
たとえば、購入したときに販売側から言われたことと違ったということが発生すれば、永久にクーリングオフになると。極端に言えば、当初、丁寧に説明し、ご理解いただき、購入いただいても、コピー機を使って5年後に、「営業に聞いたことと違う」と言われれば全額返金という事態になりかねないわけです。
当時、年配者を対象として押し売り的な営業手法をとっていた会社が、訪問販売法の変更を機にメディアに取り上げられました。そういったところから派生して、リース会社などは、及び腰になってしまいました。こうした世の中の変化を見つつ、自分たちも考え方を転換し、売り方を見直す機会だと捉えました。
それまでは、私たちが営業に行くということは、お客さまがその商品を欲しいか欲しくないかということを前提にするよりも、どちらかというと「お客様を説得して販売する・買ってもらう」という手法です。
従来はそれでいいじゃないかという考え方でしたが、やはり購入することでメリットがある人や、そもそも欲している人に対して販売することのほうが、営業する側としても気持ちがいいし、販売する価値はあるはずという思考に変更しました。
売る側はプライドを持てるし、かつお客様にもメリットを感じてもらえる・・・当たり前のことではありますが、どうしても目先の利益に捉われてしまうのが、営業会社です。
こうした流れを革命的に変えていける仕組みを作りたいと思い、2006年に『コピー機.com』という事業を立ち上げました。インターネットでお客さま自ら購入していただける仕組みです。お客様自身からの能動的な購買については、クーリングオフの対象外になります。こうして、無用のリスクを回避できる仕組みができたのです。
ただ実際にサイトを作ったからすぐに売れるのかというと、そう簡単なものではありません。けれど私自身、それまでの経験から、売れる仕組みをある程度理解していたからできたことだったのですが・・・1ヶ月ほどで100台近くの台数が売れるようになり、同時にサイト自体の価値も上がり、お問い合わせも増えていきました。
こうしてインターネットを利用することで、顕在化されているニーズに関してはお客様自らの能動的購買で解決。あとはコールセンターを設けて潜在的ユーザーを掘り起こしていったという手法も並行して進めたことも、成功の要因です。
● 顕在的ユーザーと潜在的ユーザーとでは、重複などはないのですか。
実は全然かぶっていなかったんです。だから、違うゾーンにいながらも、需要のあるお客様に対して漏れなくきちんとリーチできる社内体制をつくっていこう―こうして方向性が決まってからは、ウェブでの集客チャネルを起点とした展開に注力していきました。
あのとき、訪問販売法の改正が行なわれていなかったら・・・きっとそのままのスタンスで販売を続けていたと思います。いつか失敗していたかもしれませんね。新たなハードルが、企業を成長させてくれたと感謝しています。
現状、ビジョングループ全体の売上げの約半分は、お客様から能動的に検索などを通して、注文をいただく形になっています。受注率が高いということは、社員の定着率にもつながり、かつ様々なスキルや従業員満足度も上がっていきました。
これらが結果的に、コピー機の販売実績に直結していると思います。昨年度、キヤノンさんの全国販売店の中で、新規純増1位となることができました。
こうして振り返ってみると、ひとつひとつの危機が次の新しいものを生み出すターニングポイントになっています。とはいえ、「どんどん危機よ、来い!」とは思わないですけどね(笑)。
【続く:3/5】
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