【増永】 経営者として重要視されていることがあれば、ぜひ教えてください。
数字に対する意識付けはやはり大切です。でもただ単に「数字を意識しなさい」と言うのではなく、ここで注意したいのは、本当に正しい数字で話ができているかということ。
経営者にとって、経営者視点を持つ社員の数が増えることは、非常に嬉しいじゃないですか。だけど「経営者視点」とひとことで言われても、社員によっては難しく捉われがちです。でも実は、社員みんなが自然と持ち合わせているような視点でもあるんですよね。
たとえば、「1つのプロジェクトを実行すると赤字の可能性がある。だけどこのプロジェクトはお客さまとのコネクションを深めていく上で大切な仕事でもあるから、たとえ赤字であってもお客さまの満足度を優先させるべきだ」というプロジェクトがあったとします。
会社としてそのプロジェクトを進めるか否かの判断を下すとき、数字だけの話をしてしまったら、経営者も「赤字になるなら、やめよう」と判断してしまうと思うんです。
だけど数字だけではなくて、それをしてでも会社にとってメリットがあるということを話せれば、経営者だって「赤字になるならダメだ」とはならないじゃないですか。いろいろと考慮しますよね。より正確に判断を下してもらうためにも、自然と社員はあらゆることを考えて報告していると思います。
一見、当たり前のように社内では行なわれていることかもしれませんが、こうしたことが実は会社全体で見たときの収支バランスにつながるのです。しかもそれができるということは、会社全体の数字の収支が見えているからこそじゃないでしょうか。
もう1つ身近な事例を出してみると、あるユニットから「忙しいから人を増やしたい」と言われたからといって、経営者はすぐさま増やすかというとそれは違いますよね。それだけの理由では人を増やせません。提案する側ももっと判断材料を提供して、見えるべきところを見えるようにしなければならないじゃないですか。そういう事前準備が大切なんですね。
1人増えたことで、どんなことが起きて何を期待できるのか−そういうのを数字をもって証明でき、かつきちんと判断材料として説明できるようにする。この仕組みを早期に確立できれば、結果として社員の成長にもつながると思います。
「今動いていることは、何に紐づくのだろうか」―これを意識しながら行動できる人が増えていくことは、会社としてもプラスで、絶対に強くなるでしょうね。
会社が使える経営資源は限られていますから、そこからいろいろと理解してバランスをとりながら資源を選べる人材は貴重です。
会社としては、お客さまも喜んで私たちも喜べる環境―Win−Winの関係であることが重要だと考えているんです。だからどちらか一方が笑いすぎているような仕事の仕方は、理想ではありません。
理想を実現するためにも、状況をきちんと把握してそれに対する行動を調整することは、誠実な仕事の進め方としてものすごく大切にしていることです。
● その他はいかがですか。
やはり成長産業を選ばなければならないということですね。もちろん、仕事を続けていく上では、成長産業以外の産業においても注目すべきではあります。ただ私たちのようなベンチャー企業が成長していくためには、新しい成長産業を選ぶことが自分たちの成長のための基本的要因になると思うのです。
だから、マーケットが伸びていくことを意識しながら仕事を選び、新しいことにどんどん前向きに挑戦していく姿勢を忘れないこと。ここを意識して経営をしています。
あとは、「会社を毎年、しっかりと安定的に成長させていきたいと思っている」ということを社員一人ひとりに伝えることですね。そうすることで、社員もよりやる気になっていく。そして逆に「成長していくためには、何をすべきか」ということを自発的に考えていくというプラスの展開が起きます。
● 御社独自の制度などあれば教えてください。
「キャリアトランスファー」と呼んでいる制度があります。これは、「直属の上司に報告することなく、斜めにいる上司から許可を得れば、部署異動ができる」といった制度です。
部署異動願いって、言われた側からすればけっこう傷つくんですよね(笑)。でもこれって決してその上司が嫌いだからという理由じゃなくて、自分自身の中で他の仕事をやってみたいとか、そういう気持ちが芽生えることによるもので、1つのキャリアアップでもあるわけです。
せっかく一緒にやってきている仲間だし、自分のやっている仕事が嫌になったから他の部署で仕事をしてみたいなんてそんな勝手な希望はなかなか言い出せない・・・悩んだ挙句、会社のことが嫌いになったわけでもないのに、転職を考えるようになってしまったら、お互いにとってそれはとても残念なことです。
それを防ぐためにも、社内の中で職種転換をスムーズに図れるようになればいいのではないかと思い、このような制度を設けました。
また、理念を大切にした経営を意識しており、評価制度については数字よりもむしろカルチャーや価値観の部分を重視した内容で実施しています。先ほどは数字を重視したことを申しましたが、かといって、数字でかっちり管理しているというわけではないのです。
理念と数字との二面性を持たせて、使い分けています。原因分析や改善、対策を実施するために数字が見えるようになるのは大事だと思いますが、評価といったところでは、数字を使うことは良しとはしていません。
● ありがとうございます。では川田社長の尊敬する人物を教えてください。
立派な会社を一代で作り上げた・・・いわゆる創業経営者の方々を尊敬しています。松下幸之助さんや本田宗一郎さん、盛田昭夫さん、そして今もなお活躍されている稲盛和夫さんです。
● 好きな本があれば教えてください。
今1冊を挙げるとなると・・・定番ではあるかもしれませんが、『ビジョナリーカンパニー』シリーズや『イノベーションのジレンマ』ですね。特に『イノベーションのジレンマ』については、自分たちが目指している会社を作るためのステップとして、きちんとまとめ上げられているので、もう何度も読み返しているくらいです。
一方、稲盛和夫さんや松下幸之助さんのような理念をベースとした本も読みますし、マネジメントという観点からはドラッカーの本も読みますね。これらは経営者として読むべき本でしょうね。
● 好きな言葉はありますか。
「知足常楽」―足るを知ると常に楽しいという意味合いになります。欲を出し続けると常に苦しむけれど、まずは現状に満足をして、それに対して感謝をすることで常に幸せでいられる、と個人的に解釈しており、この言葉を大切にしているんです。
立派な経営者の方々に共通するのは、「自分のためではなくて、他の人のためにやれることが、最終的に一番幸せなことにつながる」という思考フレームを持っているということ。少しでもそれを実現するためにも、まずは自分自身が知足常楽の世界で満足を得る、どんな状況下においても、常に今の自分に満足しようという気持ちを持つようにしているのです。あまり我の強い欲を持つ必要性はないと考えます。
少し話がそれますが・・・私は、幸せとは相対的なものであり、絶対的な幸せは世の中に存在しないのではないか、という持論を持っています。昨日や一昨日、さらには昨年よりも少しでも何かが良くなっていることが、あらゆる面において幸せであり、逆に何かが少しでも悪くなっていたら、それは不幸と感じてしまう。これが人間として、当たり前の思考だと思うんですよ。
分かりやすいところでは、収入。額が落ちればみんなが不幸で、上がればみんなが幸せになる、そんな絶対額は存在しませんよね。
そういう意味でいくと、「どこに幸せがあるのか」という絶対的な発想をなくすためにも、「今」に常に満足して、そこにプラスして努力をすることで、さらに幸せを得られる環境が、私自身にとっても一番幸せでいられるものだと思っています。そのためには努力が必要だ、と言われれば自ずと納得もできるのです。
● 最後に御社のビジョンをお願いします。
日本が誇れるワールドワイドな会社を作ることが、ビジョンです。ワールドワイドって、規模的なものなのかとよく聞かれるのですが、規模で言えば数万人レベルで考えています。
オロという社名には、それを聞いただけですぐに当社がイメージされることを願ってつけた社名なんです。たとえばソニーという言葉を聞けば、誰もが同じ会社をイメージしますよね。もし仮にソニーという会社がなければ、「ソニー」という音を聞いたとき、なんとなく違和感があると思うんです。だからそういう意味で、新しい日本語が生まれているということだと思うんですよね。そういうのに憧れていて・・・自己満足かもしれませんが(笑)。
そんな憧れも含めて、オロ=当社という確立されたイメージを生み出すこと。そういう会社にしていきたいです。
もう1つ、そうした会社にする上で、会社の与える影響として悪いものは生み出したくない。関わっていく人たちに対して・・・それは社員だけでなく、お客さまもパートナーとして一緒に仕事をしてくださっている方々もすべてが、良い方向に向かって仕事ができればと思っています。
だから「儲かればいいや」ではなく、社会的に良い影響となるような仕事をこつこつとしていきたい−そう思ってやってきています。
会社の理念としては、「1つは世界に、もう1つは社会的にいいことをしていきましょう、そして社員全員、自己実現を達成しましょう」というのを掲げています。
私たちの仲間になってくれた人たちがあるとき、ふと人生を振り返ったとき、「オロにいた人生はとても良かった」と感じてくれるような会社にしていきたいです。
これが私自身のビジョンでもあり、会社のビジョンでもあります。
【完:3/3】
次号:株式会社ビジョン 代表取締役社長 佐野 健一 氏