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【増永】 川田社長が会社を立ち上げることになった、きっかけを教えてください。
東工大出身なのですが、卒業後の進路はほぼ100%が就職、しかも大企業への就職が比較的多い中、私自身はちょっと違う進路を考えていました。私にとっては、大企業への就職はさほど魅力的でもなかったのです。それは、実家が事業を立ち上げていたということ、そして親戚にも事業家が多かったということが影響しています。
そんな影響を受けていたので、将来的には「父の事業を継ぐべきか・・・」と真剣に考えていたのです。ただ実は、大学入学した頃に父親からは、「大企業に入れ。そのほうが生涯年収もきっといいはずだ」と、大企業への就職を勧められていました。
だけどなんとなく、大企業への就職を自分の中で消化できず、もやもやしていたんですよね。このままでは大学卒業後の進路も決められない−そう思い、大学4年生のときに休学をしてアメリカ留学しました。
ちょうどそのタイミングで、父親からソニー創業者である盛田さんと井深さんの本をもらったんです。これらをきっかけに、いろいろと考えさせられました。
たとえば、立派な大企業というのは創業者一代で企業のベースを築いていたりするんですよね。それを知ってからは、「自分もいずれは、大企業となるような企業を作りたい」―と、明確に事業家としての想いを抱くようになりました。
それからは仲間探しです(笑)。同じ研究室にいた日野を巻き込みました。
起業の原点やきっかけというのは人それぞれだと思いますが、私たちはどちらかというと「この事業をやりたいから会社を作ろう、これが儲かるからやってみよう」というスタンスではありませんでした。「自分たち一代で少し大きくて立派な企業、しかも日本が誇るグローバル企業を作れたら、人生楽しいだろう」。そんなところが起業の原点になっています。
● どのような事業からスタートされたのですか。
起業時にすでに事業のコアコンセプトがあったわけではなく、たまたま大学での専攻領域がITに近く、初期投資もあまりかからない印象があったのでIT領域でスタートすることになりました。
当然のことながら、会社を作ることは私たちにとって初めてのことであり、大変だろうということはそれなりに想像できました。
そこで、二人別々にソフトウェア会社にアルバイトとして仕事をしたこともあります。アルバイト先には最初から、「会社を作りたいと思っているので、いろいろと教えてください」というスタンスで仕事をさせてもらっていました。
こうして準備期間を挟み、まさにインターネット時代の黎明期であった1999年に、いよいよ会社を立ち上げ、受託開発を基軸としたビジネス展開をしていったのです。
B to Bの受託を請け負っていたのですが、いわゆる社内の業務効率化を図ることから始まり、それらが発展していく過程で、ウェブ事業にもつながっていきました。
● 現在は具体的にどのような事業展開をされているのでしょうか。
現在はクラウドという事業領域の中で、業務システムの開発と提供を行なうビジネスソリューション事業とウェブ関連のコミュニケーションデザイン事業を展開しています。
なぜクラウド領域に注力することになったかというと、クラウドが一般化する以前は、いわゆる受託開発、オーダーメイドのシステム開発が主流だったわけですが、この受託開発の非効率性は、お客さまにとっても、また我々にとっても大きな問題である、と考えたのが大きな理由です。
私たちも最初は、オーダーメイドで作ったものをベースにしつつカスタマイズして最終的にクライアント先に納品していました。だけどお客さまごとに毎回改修が発生したりするので、手間がものすごくかかっていたのです。その分、お客さま側でも負担する金額が増えていくので、お互いにとって非常に非効率じゃないですか。それに、保守メンテナンスという観点からも、オーダーメイドのシステムはメンテナンスに属人性が生まれやすく、このシステムのことはその人に聞かないとわからない、というリスクが発生します。
では、どのような改善をかけることがベストかを考えたとき、1つのシステムを様々なお客さまに対して提供させていただき、お客さまからいただいた改善のアイデアや新しい機能もそのシステムに組み込みシェアをする、そして継続的にサービスの質を向上させていく、そのようなモデルを思いつきました。
お客さまにかかるコストを仮に3分の1くらいに抑えることができ、かつこれまで投資した金額以上のメリットを出すことができる−そんなことが実現できれば、お客さまにとっても大きなメリットが生じるはずです。それを実現できるのが、クラウドサービスだったのです。
● コミュニケーションデザイン事業はどのようなものになりますか。
ウェブを中心とする企業のコミュニケーションのお手伝いであり、広告から広報、採用支援など社内外含めたコミュニケーションの支援事業です。
そもそも健全な企業活動を行なうには、コミュニケーションを図ることが必要であり、では誰とコミュニケーションをとるべきか・・・それはたとえば、お客さまはもちろん消費者だったり株主、社員などが挙げられるでしょう。そして、相手によってコミュニケーションの目的が異なるため、その手法も自ずと変わります。
たとえば、ECサイトで考えてみましょう。まず最低条件として、ウェブサイトの制作やその運用ができていなければなりません。そしてエンドユーザーがウェブサイトで注文できるようにするためには、そのバックグラウンドで基幹業務システムが機能していなければなりません。こうした外側と内側をワンストップでつなげたいというニーズは、すごく増えているんです。
しかしながらニーズは増えているのに、両方に対応できる会社は実は数少なかったりします。要は、基幹業務システムの開発から運用までをやりながらも、一方でウェブサイト制作をワンストップで受託している会社は、聞いたことがありません。
いわゆる広告産業とシステムインテグレーターを併せ持つようなポジションの融合が、すでに求められつつあります。システム力が求められるし、一方でコモディティ化が進むにつれてクリエイティブ要素を求められるようになっているのです。
私たちが手がけていることは、一見まったく違う事業を両立させているように感じられますが、私の思考の中では二つは密接につながっているんですよ。「アイデアとテクノロジーを結びつけることによって、世の中をよくしていこう」という考えのもと、展開しています。
【続く:1/3】
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