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【増永】 徳重社長がこれまでどのような経緯をたどってこられたのか教えてください。
金融機関で5年ほど働いていたのですが、もともとベンチャー企業を立ち上げたい−という想いがあり、迷った挙句、29歳で会社を辞めました。
どうせベンチャー企業を立ち上げるのであれば、シリコンバレーをそのステージにしたいと思っていましたが、私は技術者ではないので技術勝負はできません。
そこで、MBAを取得することを最初の目的に渡米。取得後、日本に帰国するのが普通なのですが、私は帰りませんでした(笑)。私にとっては取得こそが目的ではなく、最終目的はシリコンバレーで会社を立ち上げることですから。
目的を達成するためにも、MBA取得後はそのままシリコンバレーに残り、インキュベーションの仕事を始めました。たまたま日本の子会社であり現地で休眠会社になっていた会社の社長に「給料はいらないので、この会社を私にやらせてください」とお願いをしたのです。
希望を受け入れていただけ、その後売上げをあげてなんとか生活を立てられるようになっていきました。
● どのような仕事をされていたのですか。
技術系のベンチャー企業でしたが、一般的なITというよりも、よりコアな技術を必要とするようなビジネスを展開していました。たとえばMPEGの音声アルゴリズムや暗号技術、セキュリティ技術・・・そうしたソフトウェア技術を持っていて、日本の会社やシリコンバレーの会社がアジア進出をする際のお手伝いなんかをしていたのです。
かなりハンズオンで取り組んでいたので、ベンチャー企業の楽しさや大変さ、そして日米の違いなどがリアリティをもって分かるようになっていきました。それまでは前職での影響から、大企業のことしか分かっていませんでしたから・・・非常に勉強になりましたね。約5年、この会社でいろいろと学んだのです。
● シリコンバレーでビジネスをされてきて、どのようなことを感じましたか。
思いとしては、「なぜ日本からはシリコンバレーのような会社が生まれないんだろう」ということでした。
帰国後は、日本の技術をもってグローバルに展開していきたいという気持ちがあったので、それを実現できそうな会社をずっと探していたんです。しかし目の当たりにしたのは、世界に通じる技術はあるけれど、大企業の中に埋まってしまっている感じで、なかなか外の世界には出てきていない−ということでした。
稀に外の世界で人目に触れても、ビジネスに繋げるには難度が高かったりしたのです。
私としてはコア技術にこだわりながらさまざまな会社をコンサルティングしつつ、成長の種となるような企業を探していました。
そんな中、あるとき1つの考えにたどりついたのです。これまでの発想を変えて、コア技術じゃなくてもイノベーションを起こせるようなビジネスはどうだろうか、と。
当時私がやろうとしていたのは、日本の技術を世界に打ち出していくということで、理念としては素晴らしかったと思います。だけどビジネスとして考えたとき、自らマーケットのないところで商売をしようとしているようなものではないかと思ったのです。
こうして発想を変えて今から3年前に、現在の事業ドメインとなるネタを発見しました。
当時、シリコンバレーにいた知人たちに今何をしているのかを聞いたところ、「電気自動車(EV)」の市場に参入しているという声が多かったのです。最初はあまりピンとこなかったのですが・・・もともと、GMやフォードといった自動車関連に携わっていたのではなく、直接的にはあまり関係のないITに携わっていた人が、EV産業で働いていると言われてもね・・・。
違和感があって調べてみたんですよ。そうしたら、事業の特徴として垂直統合が水平分業になり、ビジネスモデルが大きく変化するとか、非常に魅力的な市場であると感じました。しかも環境分野でもあるので将来的な成長性も大きく期待でき、自分もここに参入していこう−そう思い、3年前にスタートしたのです。
● 現在の御社の事業内容を教えてください。
まさに今、一般的に「EV」といわれているもののスクーターバージョン−要は電気で動くスクーターの開発・設計・販売を手がけています。
モデルとしている企業があって、それはテスラモーターズ社です。
テスラモーターズ社は、シリコンバレーを拠点としてEVを開発・製造・販売しています。この会社の凄いところは、設立8年にしてヤマハ発動機と同じくらいの時価総額になっていること。私たちTerra Motorsも2年以内にはテスラモーターズ社のようなポジションを狙います。
同社の売上げ実績は120億円ほどで赤字も同額、為替の問題もありますが、それでも時価総額は3,400億円にも上るのです。
ちなみに同社の資金調達を主導したのは、PayPalの共同設立者の1人であるイーロン・マスクという人物で、南アフリカ生まれの起業家であり、現在取締役会長に就任しています。
現在、電動スクーターの分野では同社のようなポジションを取っている会社はなく、そこに入り込むことを私たちが目指しているわけです。
● 実際に既存のスクーターとの違いやメリットなどがあればぜひ教えてください。
一番分かりやすいのは、エンジンが電気になることですよね。それによってガソリンやオイルが不要になり、女性にも受け入れられやすいと思います。オイルなんかで汚れるということが防げますからね。
もう1つは、「音」です。電動になることでエンジン音はせず、モーター音がするような快適な音になります。環境的にもとてもいいのです。
エンジンとなると、どうしても爆発させて乗る乗り物になってしまうんですよね。だから相当な高級車に乗らないかぎり、どうしても振動が発生して不快な音がしてしまう。一方電気の場合は振動が一切ありません。だからそこに関しては高級車に乗っているようなイメージになるのです。
そして、ダイレクトに加速していくのもメリットでしょう。
こうしていろいろとメリットはあるわけですが、そもそもEVや電動バイクというのは、「破壊的技術」と言われています。破壊的技術の特徴は、最初は既存のものよりも性能は劣っているけど、次第に既存のものを追い越していくという点です。
具体的に過去の事例を挙げてみると、カメラがそれにあたると思います。フィルムを使ったアナログカメラがデジタルになったとき。最初は画質がものすごく悪かったわけですが、今ではどんどん改善され、一般的にはデジタルが主流となっていますよね。
そうした歴史を見ていくと、私たちがやっていることもまだまだ始まったばかりではあるけれど、将来的には明るいと感じています。
【続く:1/4】
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