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【増永】 御社で工夫されていることなどがあれば教えてください。
要因分析シートなどの活用があります。営業成績が悪い場合、このシートを活用することによって本質的な部分から改革を行なうことができ、科学的な経営へとつなげているのです。
この導入のきっかけは、お客さまとの会話でした。当社に対してどんな期待を寄せているのか、そういうことをヒアリングしたりするんですね。
私がもし加盟店の一担当者だったら何をするだろうか・・・と考えたとき、おそらく私はスーパーバイザーとして揚げ足取りをすると思うんですよ(笑)。「これができていない、あれができていない」と。実際に、当社のスーパーバイザーはそれをやっていたようです。
そうしたらあるオーナーから、「井上君のところは、うちに来ても文句しか言わない。文句ばかり並べて帰っていくから、もう来なくていいよ。こっちのやる気がなくなっちゃうんだよ」と言われました。
たとえば飲食店の事例として、トイレの清潔さがお店の印象や売上げを左右するといった話があげられますよね。一理あるとは思いますが、とはいえトイレをきれいにしたら全ての問題が解決されるかといえば、それは違います。
精神的な効能から見れば、「通常清潔でないトイレを、きれいにしていく、汚ないものも思い切って素手で対処していく」―要は、自分の前に立ちはだかる高い壁を、自ら取り払っていく・・・ここには、一歩踏み出す勇気というニュアンスが隠されていると思うんですよね。そういう真意を理解できないまま、「ビジネスは、トイレがきれいでなければ上手くいかない」と言っても、意味がありません(笑)。
結局、ビジネスというのはきれいごとばかりを言っていられなくて、なんだかんだ、利益を出さなければならないじゃないですか。その利益を出すとき、その構造などを分析することが経営者としてまずすべきことだと思うのです。そこで、私だったらどうするだろうかと考えました。
仮にある店舗で1ヶ月に1,000万円の粗利が必要だとしたら、この業界でいえば小売りによってもたらされる粗利と、買い取ってオークションで売却する粗利の合算にあたります。そうして、それぞれの領域でどのぐらいの粗利を創出すべきなのか、と考えるのです。
小売りの場合、車1台あたり20万円の儲けがあり、10台売れて200万円の粗利が出たとします。そうしたとき、10台売るために必要な接客件数を出すことができます。
つまり、集客が足りないのか成約率が悪いのか、それとも1台あたりの粗利がそもそも悪いのか・・・1つの事象に対して分解していけば、どこが要因になっているかそこに行き着くことができるのです。
だけどそこを見ずして、気合と根性論をどれだけ訴えても意味がありません。それに、社員から「私のやる気が足りないんです」と言われてもね。
指導する側にとっては、いわゆる根性論を語るのが好きな傾向もあるようで、営業担当に数字を詰めていった結果、「やる気が足りない、覚悟が足りない」という着地にさせてしまいがちとか。
そう思ってくれるのも、悪いとはいいません。だけど、根性が何倍にもなったって、売上げが比例して伸びるかというと違うじゃないですか。
私の見る限り、接客件数が足りないのか、成約率が悪いのか・・・何が要因なのかを分かっていないケースが多いのです。それを解明して科学的な経営をしていかないと、現場の人たちはただただ疲弊していくだけなのです。
日本の市場は残念ながら、ボリュームは今後縮小していくことが大前提になっていると私は思っています。マーケットボリュームが拡大しているときは、気合や根性論である程度乗り切れたと思うんですよ。働く時間を延ばしたり、サービス残業をたくさんさせることで解決できたことはあると思う。しかしこれからは、残念ながら日本のマーケットボリュームは縮小する一方です。
私たちがいる自動車産業は、免許の保有人口は増えていても、自動車の保有人口は減少しています。そんな状況の中、気合と根性論ばかりで乗り切ろうとしても、働いている人たちは幸せではないですよね。ということは、もっと科学的な視点で本質的な部分を改革していかないと、この業界で働いてくれている人たちを守っていけないと私は思っています。
● 井上社長は、中古車業界の人たちが幸せに働ける―そうした業界作りのための志を強くお持ちですね。
そうですね、私がよく社員に言っているのは、「自分が幸せになりたいのであれば、自分の所属するチームを良くしなさい― 儲けるようにしなさい」ということです。
自分のチームがよくなるには、会社自体が良くなっていないと絶対に実現できないものです。自分たちの会社を良くするためには、この業界全体をどうしていくか、じゃあ、業界が良くなるためには、国家が良くなっていかなければならない・・・私はそういうものだと思っています。
もしトヨタさんなどの大手自動車会社のように何万人規模の会社だったら、社員一人ひとりの及ぼす影響範囲は大きくても、自分がやっているんだという実感は、思っているほど大きくはないのではないでしょうか。
ところが当社のように本部に30名ぐらいしかいない規模だったら・・・社員一人の存在は、全体の30分の1なわけです。おかげさまでこの業界ではカーセブンの認知度も高くなっているので、業界のために何をしていくか、どうしていくかと考えて実行することは、夢物語でもなんでもありません。極めて現実味が高くて、実現性も高い話です。
そういった環境に私たちはいるので、どうせ仕事をするなら自分の動きや発言、夢が業界全体に影響していくほうが楽しいはずですよね。
【続く:3/6】
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