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【増永】 新たなビジネスとしてお醤油を選び、その後どのようなステップを踏まれたのですか。
商材が決まった後は、まず数多くのお醤油屋さんを回ろうと決めました。当時は川崎に住んでいたのですが、関東近辺のお醤油屋さんを1週間くらいかけて30軒回ったのです。
しかも全部アポイントなしの飛び込みです(笑)。「こんにちは」と訪ねて、「見学させてください」と。こうして実際に足を運んでいくうちに、少しずつお醤油の業界のことが分かってくるんですね。
昔ながらの木の桶で仕込みをしているメーカーもあれば、プラスチックのタンクでしているメーカーもある。さらには、5階建ての建物くらいの大きさがある巨大タンクでしているメーカーもありました。
原料も国産の大豆を使っているところ、輸入の大豆を使っているところ、脱脂加工大豆という大豆から油を抜き取ったものを使っているところもありました。そして実はこの脱脂加工大豆が、流通している醤油の約8割だったりと・・・
いかに醤油のことを知らなかったなぁと実感していたのですが、醤油を搾る前の状態を「諸味(もろみ)」というのですが、この諸味を持っていないところもありました。実は多くの醤油メーカーがそうであるのですが、地域で組合をつくって協同の工場を建設し、仕込み部分をまとめて行なうのです。
そもそもは戦後の中小企業近代化促進法の取り組みの一環であったそうですが、現代においては差別化がしにくかったり、大手メーカーとの競争の中でその協同工場自体が存続できなかったりと業界内での苦労話を多く伺いました。
いろいろな現場を自分の目で見ていき、ある程度知識を持った上でブランドごとにお醤油の瓶が並ぶお店に行ってみたんです。だけど、どれが良いのか悪いのか・・・まったく知識がない状態ではなかったのに、全然分かりませんでした。
だからきっと、実際に購入する消費者の方も、各商品の違いとかを知らずに購入されていると思うんですよ。単純に、「価格の高いものが良いお醤油だ」という認識の方が多いのではないでしょうか。通常は、それくらいの選択肢しか持てないと思います。
こうした醤油業界の現実を垣間見たことで、私自身はとことんこだわって作っている職人さんたちと何かできることはないか、ということを考えるようになりました。
自分だったらまずどうしたいかを考えたとき、数あるお醤油の味比べをしたいと思ったんです。だけど市販されているお醤油はたいてい1リットル単位だし、何本も買う勇気はないじゃないですか(笑)。そこで、もっとお手軽に試せるサイズにしたらいいのではないかと思い、現在使用している100mlサイズの瓶の採用を思いついたのです。
100mlの瓶を持って、30軒のお醤油屋さんを回りました。「この瓶を使ってください」と行脚したわけです。
● もともと御社の規格サイズなのですか。
既存のサイズではあったのですが、あまり流通していなかったようで、瓶を取扱うところで探してもらったという経緯があります。
もう1つ工夫している点があって、それは瓶のキャップを統一していることです。100mlの空き瓶とキャップを一括で私たちが購入して、各醸造蔵に送っています。届いた空き瓶に中身を詰めてもらい、その瓶に貼るラベルも各お醤油屋さんのオリジナルになっており、それを貼り付けた状態でこちらに送り返してもらいます。
● 各蔵で瓶詰めを行なうのは、相手側にとっては大きな手間になるのではないですか。
おっしゃるとおりで、大きな手間となっています。そもそも、当社からは大量ロットでの購入はできない旨を事前にお伝えしていて、多くて1回の発注ロットは140本くらい。そのぐらいの数になると、手で瓶詰めしたほうが早いんですね。
さらに、機械ではなく手作業ということは目分量になってしまうため、すべての瓶の入り量を揃えるのがなかなか大変なんですよ。同じ蔵であれば、1本を見本にして入り量を揃えることは可能です。だけどさまざまな蔵にお願いしているので、どれだけ厳格に「ここまで入れてください」と決めても、どうしても蔵によって違いができてしまいます。
さらにキャップの向きとラベルの向きも指定しているので、いつも「注文が細かい」と言われています(笑)。それでも皆さん、きっちりやっていただけるので感謝しているんです。
● 仕入れの部分が固まったところで次は販売となりますが、そのあたりで工夫されてきたことを教えてください。
実は何もなくて、広告も宣伝も一切やっていないのです。最初は商品の品揃え―お醤油屋さんの数を増やしていくことが、最重要であると認識しています。だからそちらに注力して、少し落ち着いてきたら販売のほうにも注力していこうという考えです。
おかげさまで、商品販売のほうは積極営業をかけずともどうにか売れるようになってきている状態です。そうなると、卸においても相手側からお話をいただくことが多くなり、好循環を生み出せています。
● 高橋社長も直接お店に立つことはあるのですか。
毎日とはいきませんが、出られるときはお店にいます。遠方はるばるやってくる方もいらっしゃって、そういう方はいろいろと話を聞きながら購入したいとおっしゃるんですね。そういうときには、私がきっちり接客させていただいています。
【続く:3/5】
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