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【増永】 前職での経験から現在のビジネスの基礎につながっているものは、どのようなことがありますか。
いちばんは、お客さまとの信頼関係に対する考え方です。私がキーエンスに入社して「恵まれているな」と感じたことは配属先でした。当時、トップ成績を出していた営業担当者の率いるチームに配属となり、その人から直々に多くのことを教えてもらったのです。
その方が常に言っていたのは、「お客さまと営業担当は対等だ。だからお客さまから対等だと思われるように、知識をつけなければならないし、勉強も努力もしなければならないんだ」「面談1回1回、必ず3つの視点で振り返りなさい」ということでした。
3つの視点とは、自分がお客さまを見ている視点、お客さまが営業担当を見ている視点、そして2者が話をしているのを客観的に・・・たとえば天井から見ているような視点。これら3つの視点をもって、必ず商談を振り返りなさいということでした。
3つの中でも、特に2番目のお客さまが営業担当のことをどう見るのか―という視点が一番大事であると指導されましたね。
教わった3つの視点については、今でも変わらず職人さんやお客さまと話をするときに意識しています。「この職人さんは、自分のことをどう見て接してくれているのかな」とか。
そうすると、自分の考えも話す内容も、事前に準備して相手に提供するものも自然とその場にふさわしいものを考えるようになります。こうした感覚は、キーエンス時代に身につけることができました。あとは数字的な管理の部分についてはかなり徹底されていたので、今でも染み付いています(笑)。
とはいえ、キーエンス時代に教わったことすべてが、今に通じるかというとそれは違います。それはたとえば、お客さまに対するコミュニケーションのとり方。これは、180度違います。
前職では、電子顕微鏡の営業をしていたんですね。キーエンス内では、価格の高い商品の1つであり、1台500万円から1,000万円もするような高額のものでした。だから長期にわたり営業をかけて組織を攻略しなければ、絶対に売れない商品だったんです。
だからお客さまとの商談では、この商品を購入することで利益がどれだけ上がるか、いかに効率化を図れるか・・・そんな話がメインになっていました。
一方、現在の私のお取引先となる蔵元の職人さんは真逆のタイプです。「商人じゃない、職人だ」という誇りを持っている方々ですので、前職のような営業トークはまったく効きませんよ(笑)。
だけど考えのベースになっているのは、前職で学んだことだということは実感しています。
● トップ営業としての具体的なノウハウなども教わったのですか。
私自身は、基本的に自由にやらせていただいていましたが、それでも「こんなところまで見ているのか」と驚くほどに、上司は見ていたようです(笑)。
たとえばお客さまとの商談後、見積もりを作成して上司の承認を得るフローになっていました。基本的には特に突っ込まれることもなく、承認されるんです。だけど自分の中で見積もり内容に納得がいかない―要は値引きをしすぎたとか、そういう引っかかりがあると、それが伝わるのか承認の捺印をするときに「ちょっと引きすぎだね」とひとこと言われるんですよ。
商談自体何も見ていないし、私自身も値引きについて特に相談していたわけでもないのに。自由にやらせてもらっているようで、要所要所はきちんと把握されていたんですね。
あとはデスクが隣でしたので、電話での営業トークとかもすべて聞き漏らさず自分のメモとしてデータを残していました。この内容は、私のお守りになっていました。とても勉強になりましたね。
● 数字管理とは、具体的にどのようなことをされていたのですか。
キーエンスはすべて数字管理されていたので、1日の電話時間も訪問件数はもちろん、面談の時間や相手の人数などなど、あらゆることを数字に落とし込んでいました。
【続く:2/5】
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