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【増永】 高橋社長が伝統デザイン工房を立ち上げる以前、どのような人生を歩まれてきたのか教えてください。
立命館大学出身なのですが、京都には立命館以外にも多くの大学があり、学生の町でもあります。在学中、それらの大学が参加して開催される合同学園祭の企画が持ち上がりました。各大学から学生スタッフが集まり、総勢150人からなる学園祭実行委員会が結成されたのです。そのスタッフの1人として私も参加したのですが、当時の経験が私のターニングポイントにもなっています。
合同学園祭の実行委員として、京都大学をはじめとした各大学のスタッフが一堂に会して会議を行ないました。
各大学の学生は、それぞれ個々に持っている知識や頭の回転力は素晴らしく、私は圧倒されてばかりでした。しかしながら、みんなで集まり1つの企画を練っていこうとなると、必ずしも1人ひとりの能力が発揮されるというわけではなかったんです。そういうことを体感してみたら、もしかして私でもこの場で“自分”を発揮することが可能なのではないだろうか―と考えるようなりました。
つまりは、他学生に圧倒されつつも、やる気になれば自分の居場所もつくることができると思ったのです(笑)。
これが大きな気付きの1つでした。そしてもう1つ感じたのは、いろいろなタイプの人間が集まり1つのものを作り出していくことが、どれだけ楽しいことか・・・私にとってはかつて経験したことのない、新たな気付きでもあったのです。たとえば、自分よりも学年は下のスタッフが、8ヶ月にも及ぶ企画運営を通じて頼もしくなっていく姿を見るのは、とても気持ちがいいですよね。
このときの感覚がとても刺激的で、将来は同じような感覚をもって仕事をしていきたい―そう思うようになっていきました。
そして大学を卒業後はキーエンスという会社に入社して、3年間みっちりと鍛えられました(笑)。社会人になる前に、先輩からは「石の上にも3年とは言うけれど、なかなかそれは的を得ているから、とにかく3年は続けなさい」と言われていたんです。
そして実際に社会人生活が3年経ち、一度、自分の人生プランを見直すタイミングに立ったのです。考えた結果、思い切って外へ飛び出してみる時機かもしれない・・・そう決意して、入社3年でキーエンスを辞めました。
● キーエンスさんを辞めるときには、次にやることなどは決めていたのですか。
実はノープランでした(笑)。ただ唯一決めていたことがあります。それは伝統産業や地域産業の分野で何かしら関わっていきたいということでした。
● それでは、御社の事業内容を教えてください。
全国各地のお醤油を販売しています。いわゆる昔ながらの製法で作られているお醤油を、「100mlサイズ」に限定して提供しているんです。
「お醤油は嫌いだ」という人はなかなかいないと思います。だけど、わざわざ他の商品と味比べをして選んでいる方はいるでしょうか・・・おそらく、ほぼいないでしょうね。ご存知の方は少ないかもしれませんが、お醤油は全国各地の蔵元でたくさんの種類のものが製造されているのです。それらを小さいサイズに納めることで、気軽に味比べできるようにしたのです。
そしてお試しいただいた結果、気に入った銘柄ができたとしますよね。そうしたら、あとはお客さまのほうで直接蔵元さんから大きいサイズのお醤油を購入していただく。こうしたサービス展開をしています。
販売方法としては、インターネットをメインにしていますが、当社が卸しとなって百貨店などに商品を提供したりもします。あとは当社の事務所が群馬県前橋市にあるのですが、そこでオフィス兼店舗という形で、直接販売も行なっているんです。
● 3パターンの販売ルートとなっていますが、現在一番好調なのはどれにあたりますか。
インターネット販売と卸しで、それぞれ4割ぐらいを占めており、店舗販売が2割ですね。
● なぜお醤油の販売をスタートするに至ったのか、そのきっかけをぜひ教えてください。
キーエンスを辞めた3日後に、私は結婚式を控えていました。私も彼女も既に仕事を辞めていたので、時間は十分に余っていた。そこで、新婚旅行にかこつけて伝統産業や地域産業のリサーチ旅行に出たのです。日本中を貧乏旅行しようと(笑)。
彼女の実家がある山口県をスタート地点に、北海道まで車でのんびり、いろいろな地域をまわりました。そこで出会った人や見たものからは、たくさんの刺激を受けたんです。そんな中、いろいろな商材にも出合いました。そして、お醤油を選んだというわけです。
● どのように取扱い商材を絞り込んだのでしょうか。何かポイントがあれば教えてください。
ポイントは、「日本人に欠かせないモノ」でした。さらに、何もないゼロからのスタートになるので、リスクの低いモノ―たとえば購入単価の比較的低いモノを重視したのです。
参入リスクが低くて、日本人に欠かせないモノ、なおかつ野菜のような生ものだと保存が必要になってくるので、それ以外の醸造品・・・といった形で限定していきました。
いろいろなモノが大量生産されていますが、なかでも職人さんが丁寧に作っているお醤油は、見せ方によっては多くの消費者の方に関心を寄せていただけるのではないかと思ったのです。そういう考えがあったので、こだわってみるのは面白いのではないかと。
それに、私の母親がインターネットで初めて買い物をしたのがお醤油だったんです(笑)。母親を動かすくらいだから、自分では気づいていないもっと他の魅力もあるかもしれない・・・そう思って、まずはお醤油の蔵元に飛び込んで話を聞かせていただいたのがスタートになります。
【続く:1/5】
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