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経営者向けメールマガジン「プレジデントビジョン」
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2012年3月30日 vol.1150  
Today's President

株式会社ユーグレナ
代表取締役 出雲 充 氏

昨日の不可能を、今日可能にする

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プレジデントインタビュー

昨日の不可能を、今日可能にする


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【増永】 出雲社長の好きな本を教えてください。

実話に基づいた話でもある、『ロケットボーイズ』という1冊を挙げます。著者のホーマー・ヒッカム・ジュニアは炭鉱育ちなのですが、当時は高校を卒業後はそのまま炭鉱で働いて、その町で暮らしていくというのが当たり前のような時代でした。

ところが彼は、将来ロケット技術者になるという志を持つようになったのです。両親も学校の先生もみんな大反対。しかし後に彼は、NASAの技術者となり、ロケット工学のエンジニアになっています。

私はアメリカの大学に留学していたことがあるのですが、そのときの最後の授業のテキストが、この『ロケットボーイズ』だったのです。

その授業では、「このストーリーでは両親が大反対をしていますが、あなたたちが自分自身でビジネスをするときに親に反対を受けたという経験のある方はいますか?もしいれば、それを今、このクラスでシェアしてください」と授業を行なっていたティモンズ先生が言ったのです。

数人による発表の後、次の課題が出されました。ストーリー上では主人公が高校の友人と、自分たちの作ったロケットを打ち上げるんですね。だけどそのロケットが山に落下して、その山は山火事を起こします。すると警察や消防の人たちが学校に押し入り、「こんなロケットをつくったせいで、山火事が起きたんだ。誰がやったんだ」となるわけです。主人公は校長先生に呼び出され、「もう2度とこんなことをするな」と念を押されました。

この内容を受けて、ティモンズ先生は「今までベンチャービジネスを始めるときに、学校の校長先生や警察、消防、あるいは国の機関などに反対された体験のある人は、それをシェアしましょう」と。そこでまた同じような体験を持つ生徒が数人話しました。

本の内容に戻ると、結局、先ほどの山火事の件についてはロケットが原因ではなかったことが判明するのですが、その事実は彼らが科学的に証明していったんです。

それから彼は、全米高校生科学コンテストに州代表として参加することになったのですが、また周りに反対を受けます。だけど母親と学校の先生一人が応援してくれて、コンテストに参加できました。その内容を受けて、またティモンズ先生が私たちにテーマを出すわけです。「今、あなたたちがベンチャービジネスを立ち上げたことで、親とはどのようにリレーションをとっていますか」と。そうしてまた、何人かがシェアをするのです。

こうして、本のストーリーをもとに授業が展開されました。ロケットを通じて、私たちは起業家になるのはロケット技術者になるのと同じくらい厳しくて、要所要所にさまざまなハードルがあることを知らされ、それでもその困難を超えた実例もあることを教えてくれました。

ティモンズ先生は、「私の意図をみんなが理解してくれたら嬉しいです」と最後に言われたのですが、この本自体、私は始めて知ったのでとても印象に残っているのです。当時は原書しか見ていなかったので、100%理解はできていませんでした。帰国後、日本語訳の内容を読み、ロケットもミドリムシも同じで、ものすごく大変な環境の中、意志を貫いて頑張ることの厳しさと重要さを改めて感じました。

だからこそ、自分も何かやらなければならない―そういう強い気持ちを奮い立たせてくれる1冊なのです。

● 好きな言葉はありますか。

「昨日の不可能を、今日可能にする」という言葉です。これには、もととなる言葉があります。

「今日の不可能は、明日可能となる」―またロケットの話になるのですが、世界で初めて宇宙ステーションを考案したのが、ロシアのコンスタンチン・チオルコフスキーという研究者であり、これは彼の言葉になります。

彼は、現代ロケット工学の基礎的理論の構築もしており、「ロケット工学の父」とも呼ばれている人物です。この言葉は、バイコヌール宇宙基地というロシアのロケット発射場に刻まれているそうです。この言葉を知ったとき、ものすごく感動した記憶があります。

しかし、言葉どおり「明日」が保証されていれば「今日の不可能は、明日可能となる」のでしょうけれど、もし今日死んでしまったらどうしよう・・・という私の思いもあり、この言葉から「昨日の不可能を、今日可能にする」と変換して、今でも大切にしているのです。

● 尊敬する人物はいらっしゃいますか。

『ロケットボーイズ』を用いて授業をしてくれた、ジェフリー・ティモンズ先生ですね。彼はアメリカのボブソン大学の教授だったのですが、年俸1ドルでご自身でもベンチャー企業を5社ほど立ち上げ、すべて成功を収めています。

自宅にはテニスコートやプールなんかもあって、これ以上のお金は要らないと。だけど、起業家を育てたいという想いはとても強かったのです。大学からも給料をもらわずに授業を開講、亡くなられる直前まで教えていました。

● そうしましたら、最後に御社のビジョンを教えてください。

2005年8月に当社はスタートして、12年おきにビジョン、目標を達成することを掲げています。

次の2017年までには、ミドリムシの活用で2つ。ひとつは人々を健康にすること。もうひとつは地球を健康にすることです。日本で何百人、何千人、何万人の方々にミドリムシで健康になっていただきたい。そしてミドリムシから抽出した油を利用して、トラックを動かしたり飛行機を飛ばしたり・・・発電所から排出される二酸化炭素を減らすことも、2018年までに達成したいですね。

これらを実現することで、「ミドリムシはここまで自分たちに役立つのか」という認知度を高めていきます。

そして2018年から2030年までの次の12年間では、日本から海外へと活動の場を拡げていくこと。そうしないと、そもそも私が今こうしていることのきっかけでもある、約10億人もいる十分な栄養を摂取できていない人々に、ミドリムシを活用した食品から栄養素を摂ってもらい元気になってもらう―という夢を実現できません。

これを実現するため、そして海外の発電所などからも二酸化炭素が大量に発生しているので、それらを削減するためにもミドリムシの活躍の場を拡げていきます。

余談ですが、ここ最近の台風の大型化や海水温度の上昇は二酸化炭素の増加が要因のひとつでもあります。たとえば、海水温度が1度変わるだけで、その水圏で生活している魚の種類は大きく変わるのです。チリで100年に渡ってイワシ漁をして生活してきたというのに、今ではイワシが獲れなくなっているという問題も起きています。

同様に日本の沿海部でも変化が少しずつあらわれているんですよ。たった1度海水温が変わるだけで、魚は全然違うところに行ってしまいます。これ以上影響が大きくなる前に、早く海外の発電所から出ている二酸化炭素をミドリムシで削減して、世界中にクリーンなバイオ燃料を使った飛行機が飛ぶ―そんなエコ社会を作っていきたいです。

2018年までにはミドリムシの素晴らしさや威力を実現し、次の12年に海外へとつなげていきたいと思っています。

【完:5/5】

次号:株式会社伝統デザイン工房 代表取締役 高橋 万太郎 氏


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編集後記


「百日咳」にかかったのが2月6日。そこから会社を休み、「経営の勉強に専念する」と決めて継続的に会社を休むようになってもう3月30日・・・。週に1度は出社するようにしています(でも決まっているわけではありません)。もう2ヶ月近く休んでいることになっていますが、会社を離れてみて見えてきたものもありますし、勉強は当然日常業務をやっていない分、はかどっています。研究テーマに関する文献を読み、それをまとめるだけでもまだ一ヶ月はかかりそうです。でも、今のうちにやっておくことで長期的にプラスになることは確実なので焦らずやってゆきます。最近はようやく「シックスシグマ」の研究に取り掛かりました。


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株式会社ユーグレナ


【事業内容】

株式会社ユーグレナは2005年に世界で初めてCO2固定能力に優れる微細藻類であるミドリムシ(学名:ユーグレナ)の大量培養技術の開発に成功。そのミドリムシを利用し、機能性食品、化粧品等の開発・販売を行うと同時に、CO2固定化やバイオ燃料の生産に向けた研究を行っています。


ミドリムシ(学名:ユーグレナ)について
ミドリムシは植物と動物の両方の特徴を持つ希有な微生物(藻の一種)で、人類が抱える食料問題、環境問題、エネルギー問題解決の一助を担う可能性を持っています。


1)理論上ではヒトが生きていくのに必要な栄養素をまかなえるといわれるほど豊富な種類の栄養素(59種類)を持ち、基本的には水と光と二酸化炭素などで育つことより世界の食料問題に貢献できる可能性。

2)個体あたりの二酸化炭素の吸収率が高く、増殖速度も早いため、地球温暖化の防止など環境問題に貢献できる可能性。

3)水中の成分を取り込むミドリムシの性質を生かした環境浄化技術の開発により、水質改善などの環境問題に貢献できる可能性。

4)ミドリムシから抽出した油からジェット燃料を生成できるため、バイオ燃料としての活用によりエネルギー問題に貢献できる可能性。




【プレジデントプロフィール】

出雲 充 (イズモ ミツル)

1998年、東京の駒場東邦高校から東京大学文科三類入学。

在学中に米国スタンフォード大学で開催された「アジア太平洋学生起業家会議」の日本代表を務め、3年進学時に農学部に転部。

2002年東京大学農学部農業構造経営学専修過程卒業後、東京三菱銀行に入行。

退職後、米バブソン大学「プライス・バブソンプログラム」修了、経済産業省・米商務省「平沼エヴァンズイニシアティブ訪米ミッション」委員を務め、2005年8月株式会社ユーグレナを創業し代表取締役に就任。

同年12月に微細藻ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の世界でも初となる食用屋外大量培養に成功。

2010年は内閣の知的財産戦略本部「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」委員も務めた。

また、同年に2010年東京都ベンチャー技術大賞を受賞。信念は『ミドリムシが地球を救う』。

著書に『東大に入るということ、東大を出るということ』(プレジデント社)、CDに『食料・エネルギー問題をミドリムシで解決する!』(神田昌典・出雲充)がある。




 






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