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Today's President

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2007年2月14日 vol.519

株式会社アイレップ 代表取締役
高山 雅行 氏

クライアント側に立って自分たちがどうすべきかを考える

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ムービー


起業家物語

『起業家物語』は発行者: 増永 寛之の体験に基づいたストーリーです。26歳で大企業を退職し、ベンチャー経営の世界に飛び込みました。全く経験の無い社長業、インターネットビジネスという異業種への参入などでさまざまな困難に遭遇しました。同世代の若い人たちにも是非、自分のやりたいことに勇気を持って挑戦していただきたいという想いを込めて綴っています。

第56話『自分の持てるすべての力を通じて志望企業に貢献する』へ戻る 第54話『六本木のBAR(バー)で学んだこと』へ

 第55話 2007年2月4日

就職活動開始


1998年1月、大学院修士一年生だった私は博士課程に進むのではなく、予定通り就職することにし、そのための準備を始めました。1980年代後半にバブルがはじけ、その後の日本経済は「失われた10年」といわれるほどひどい状況が続いていました。私はその真っ只中、いわゆる「就職氷河期」と呼ばれる環境の中で就職活動をすることになったのです。学歴社会が続くことを前提に中学時代から勉強していた私としては大きく当てが外れたことになります。

 

「お父さん、就職活動をしなければなりませんのでアルバイトをすべて休みます。大変申し訳ないのですが、大学院受験の時と同様に仕送りをしてください」

 

父の勤めていた会社は私が大学一回生のときに倒産していました。故に、私は親からの仕送りに頼らず、アルバイトで自活していました。

ただ、大学院受験の際には、受験勉強に専念するためにアルバイトを休み、仕送りをしてもらいました。アルバイトよりも大学院に合格することのほうが大事だったからです。

それと同じく、就職活動の期間中も仕送りをしてもらうことにしました。プライオリティ(優先順位)を考えれば、アルバイトよりも就職活動のほうが圧倒的に大事です。就職というのは人生の一大転機であり、就職先を決める段階での時間の使い方が将来を決めるといっても過言ではありません。子どもを大切にする親ならば、そのような時期に生活援助を惜しむはずは無く、また私も遠慮などする必要はないと考えていました。私の就職は、ひいては親の老後とも関係してくるのですから。

このような時期に限らず、困ったときに親の援助(親の家計が大変なときは別として)を受けられない人には問題があると思います。身内というのは最も親しい間柄の人たちであり、そんな人たちと良好な関係を築けない人は、それ以外の人たちと信頼関係を築くことはできないでしょう。困ったときだけ頼るような付き合い方ではなく、日頃から親と円満な付き合い方が出来ているかが問われます。幸い、私の家族は常日頃から仲がよく、いつでも相談でき、頼ることができるという安心感がありました。

 

「子どもを想う親の気持ちが、親を想う子どもの気持ちにつながり、両者の想いが家族の幸せにつながる」

 

私が安心して就職活動に専念できたのは親のおかげだと感謝しています。

 

 

 

「しかし凄い量だな」

 

どこで調べたのか、私のアパートの玄関先には毎日のようにリクルートブックが届くようになりました。『就職戦線異常なし』(1991)という織田裕二主演の映画にも、学生のアパートにリクルートブックがたくさん届けられるシーンがあります。まさにそれを再現したような状態でした。

まだインターネットがあまり普及していなかったこの時代、学生と企業の最初の接点がこのリクルートブックです。それを手に取りパラパラめくってみると、いずれのページも有名大企業の情報であり、どの企業でも2ページ程度の誌面を割き、巻末には資料請求はがきがついていました。

今から考えてみると、非常に限られた情報と時間の中で就職活動をしていたんだなと思います。世の中には大小含めて300万社以上あるにもかかわらず、たいていの学生はそのリクルートブックの中から会社を探します。その数はせいぜい数百社、リクルートブックに情報を掲載した企業へは学生が殺到し、そうでない企業は存在さえ知られずに終わってしまいます。

 

「知らないことは、存在しないことである」

 

優秀な社員を求める企業は、就活生にまず自社を知ってもらうことに心血を注ぎます。なぜかといいますと、如何に素晴らしい企業であっても、まず知ってもらわなければ、就活生にとっては存在していないも同然だからです。これは、企業に限らず商品やサービスについても同じことがいえます。

当然、そのリクルートブックには掲載料がかかります。従って、資本力で中小企業に勝る大企業が有利となり、必然的に有名大企業でページが埋め尽くされてしまいます。これでは中小企業に勝ち目はありません。会社の良し悪し以前の問題であり、中小企業は優秀な学生たちの目にとまることもなく、また知られることもなく終わってしまうのでした。

企業の競争力は人材の採用力で決まってしまうといっても過言ではありません。採用という段階で、勝ち組と負け組がはっきりとわかれる構図になっていました。

 

そんなこととは露とも知らず、私は興味のある企業のページをめくって、その企業の業界での地位、市場シェア、給料といった項目ばかりを拾って読んでいました。

 

「どこがいいかなぁ」

 

リクルートブックをめくっている時期というのは、完全に学生側に選択権があります。数百社の中から数十社まで絞り込む段階では「自分が選んでいる」という優越感があります。

 

「ここは給料がよさそうだ」「MBA留学制度もあるのか」「新規事業に挑戦できるなんて魅力的だ」

 

「現実」の厳しさを知らないだけに、「就職氷河期といっても自分には当てはならないさ」と高をくくっていたところがありました。

 

「とりあえず、就活経験者に聞いてみるか」

 

すでに私の大学の同期は就職していましたので、数人に電話をかけて話を聞いてみました。ところが、誰の話を聞いてみても就活の参考にはならないばかりか「今の会社の人間関係は最悪だ」「今の会社の仕事は大変だ」という答えしか返ってきません。

 

「あいつら、適当に就職活動してたもんな・・・適当にやって就職できた彼らからは適当なアドバイスしか返ってこないのも無理ないか・・・」

 

彼らも厳しい就職環境を勝ち抜いたわけで、決して就職に失敗した人たちではありません。しかし、よく言えば「その会社と縁があった」ということになるのでしょうが、その内実は、偶然の産物(あるいは妥協の産物)であったようです。

 

「こんなはずじゃなかった」

 

そんな表現がぴったりくるような結果にみんなが苦しんでいました。

 

ちなみに、早稲田大学大学院の試験に合格した直後も、「将来、就活することになるから参考までに経験者の話を聞いてみよう」ということで、「何社も内定をもらった」というツワモノを友人に紹介してもらい、その学生に電話をかけたことがあります。

 

「もしもし、友人の紹介で電話をさせていただきました横浜国立大学の増永と申します。どのような就職活動をされたのかお伺いしたくて電話しました。ぜひ、いろいろアドバイスをいただけませんか」

 

数々の有名な銀行から内定をもらったというその学生からは予想外の返事が返ってきました。

 

「君じゃ内定はとれないよ」

 

「は?」

 

「君は横浜国立大学だよね?僕は一橋大学。有名な都市銀行のほぼすべてから内定をもらったんだけど、あんなのはカス。僕はそれらの内定をすべて蹴って3つある長期信用銀行の一角に決めたんだ。ぶっちゃけ、その銀行は東大や一橋じゃないと入れない超エリート集団なのさ。僕は戦後の日本経済の発展を支えた偉大な銀行に選ばれし、偉大な人材ということだ」

 

私はその話を聞いてあきれました。

 

「なるほど、それでは話を聞いても全く無駄ですね。失礼しました」

 

私は学歴を否定しません。学歴はあったほうがよいと思いますし、その努力は賞賛に値するものと認めます。しかし、だからといって人間の価値のすべてを決めるものだとは思いません。学歴で他人を馬鹿にしたり、自分が馬鹿にされたりするものではないはずです。

当たり前のことですが学歴と人格は関係ありません。また、学歴と人間の価値にも関係はありません。もし、学歴こそがすべてなのであれば、東大生から犯罪者は一人も出ないはずです。さらに、有名大企業に入ったことで人間の価値が決まるというのも違うと思います。少なくとも、内定者レベルであれば、その企業を創ったわけでもなく、その業績に寄与してきたわけでもありません。それらは創業者や先輩社員たちが築いたものです。たかが内定したくらいで内定先の企業の威光を振りかざすのはいかがなものでしょうか。

多くの学生が「まわりからどう見られるか」にこだわるが故に、有名大企業からの内定を目指す気持ちや有名大企業に内定したことを自慢したい気持ちが芽生えることも分かります。しかし、どうもこの電話で話をした学生は勘違いをしているようで「こんな学生も学生だが、学歴で採用するこの銀行も銀行だな。こんな学生を採用するなんてホント見る目がないな」と思いました。

願わくば、私の経営するライブレボリューションが偉大な企業になったとしても、当社の採用担当者にこんな学生だけは採用してほしくはありませんし、内定した学生たちが当社の威光を振りかざすような態度を取ってほしくはありません。人の価値は、学歴あるいは内定先の企業で決まるわけではなく、当社から内定をもらったといっても「ライブレボリューションが求める人材像」にフィットしたというだけであって、それ以上でもそれ以下でもないのです。真に優れた人間ならば「謙虚さ」を持ち合わせているはずであり、決して有頂天になることなく、先輩達に感謝し、その次の世代につなげていって欲しいと思います。

念のために書いておきますが、前述の銀行は私が就職活動を始めたその年(1998)、彼が就職したその翌年に経営破綻します。結局、彼の自慢するその輝かしいキャリアは2年も持ちませんでした。

彼の言葉を借りれば、「超エリート集団」でも行き詰ったということです。少なくとも、彼の力ではその銀行を救うことが出来ませんでした。その実力の無さはいうに及ばず、就職先選びの見る目さえもなかったというところでしょうか。学歴だけで選ぶ銀行側と知名度だけで選ぶ学生側・・・どっちもどっちでしょうが、そこでまじめに仕事をしていた先輩達が本当にかわいそうでなりませんね。

 

 

 

「増永はゆっくり眠れていいよな、まだ学生だから。俺なんか9時30分出社なんだぜ」

 

「おいおい」

 

すでに社会人になっている同期たちとの電話の内容は、とても大人の会話とは思えませんでした。大学院生となり、まじめに勉強していた私は、修士論文を書いていた期間を除けば、そのくらいの時間には学校の図書館や自習室で勉強していたのです。旧国営企業か何かは知りませんが、すでに就活を終えているという優越感と社会人という立場から、学生である私を完全に見下していました。

 

「朝9時半出社くらいで威張るなよ・・・」

 

そう思いながら電話を切り、また次その次と電話をかけ続けました。

 

「いろんな会社のOBに会ってみるのがいいんじゃないかな。大学の就職課に行けば、OB名簿が置いてあるよ」

 

最もまともなアドバイスがこれでした。

OB訪問をやらなければならないという発想をもっている学生はあまりいないのではないでしょうか。そして、ちゃんとやっている人なんてほんの一握りでしょう。ところが、よくよく考えてみると、OB訪問は会社との接点の中で一番信頼性があり、詳しい情報が得られるのです。わずか2ページあまりのリクルートブックよりも、その会社で実際に働いている人たちから得た生の情報のほうが余程有益でしょう。もしかすると一時間やそこらの会社説明会よりも有益かもしれません。私は早速OB訪問を始めることに決めました。

 

 

 

「銀行では一ヶ月の休みはありますか?」

 

「あるわけないだろう!」

 

当時、最も興味を持っていた業界は金融でした。母が一時期、大手都市銀行に勤めていたことが原因かもしれません。とにかく、少しでも接点が感じられたその大手都市銀行から回りました。

 

「そりゃそうだな」

 

銀行に限らず、いずれの企業に対しても一ヶ月の休みを期待することのほうが非常識。OB訪問をするたびに、その会社のことだけでなく、社会人として知っておくべき事などを吸収できたことはプラスでした。

 

「君に会ったことは人事にも報告しておくからね」

 

OB訪問でも、企業によっては人事部に情報が伝わります。そういったことをうけて、OB訪問をするたびに、そのやり方もパワーアップさせていきました。

 

「流石は大学院生!」

 

特にOBの方にウケがよかったのが、自分の履歴書や自己紹介シートを300円くらいの「クリアファイル」に入れて持っていったことです。ホッチキスやクリップでとめて持っていくのではなく、大事なプレゼン時に資料をはさむような見栄えの良いクリアファイルにまとめていくと驚かれるのです。

おそらく、紙だけ、ホッチキスだけで持っていくよりも、クリアファイルに入れて持っていったほうが印象もいいですし、ゴミ箱に捨てにくいでしょう。たとえ、中身は捨てられたとしても、クリアファイルだけは使ってくれるに違いありません。

 

「こんな300円の投資なんて安いものさ」

 

先輩に少しでも得した気分を味わってもらえれば、私と会ったことをプラスにとらえてくれるのではないか・・・人事部にもよい報告をしてくれるのではないか・・・仕事で忙しい先輩達とのwin-winな関係の構築に腐心しました。

 

 

 

 

「うちに入りたいの?だったら自己PRがしっかり出来るようにならないとね」

 

人気企業の一つ、大手広告代理店の先輩にOB訪問したときのことです。

 

「あの先輩はコネで入ったことで有名だよ」

 

そんなあまりよろしくない評判を獲得していた先輩から「自己PRの手伝いをしてやる」といわれました。

 

「人の好意を無にしてはいけない」

 

ちょうど自己分析や自己PRの大切さに気づき始めた頃でもあり、彼のご好意に甘えることにしました。

 

「自己PRにはインパクトが必要なんだ。例えばエベレストに登ったとかね。ウソでもいいからそれくらいの話が欲しい。君には何かインパクトのある話はあるかい?」

 

「父が勤めていた会社が倒産しましたけど」

 

「いいねぇ。あとはそれにキャッチーなコピーをつけよう」

 

このときには「流石、広告代理店に勤める人の発想は違うな」と感心しました。しかし、真剣に就活を続けているうちに「インパクトやキャッチコピーなんて必要ない」ということに気がつきます。特に就職活動の初期段階にある学生は、「インパクトのある伝説的な話をしなければならないのではないか」という勘違いに陥りがちです。友達との間でそういった噂が流れたり、先輩達から代々受け継がれたりしている伝説的な話があるからでしょう。ところが、本質はそこにはありません。適当に就活した人間やコネだけで入ったような人間には、その本質を見極めることなく社会人になってしまう人も少なくないでしょうね。

 

「よし、自己PRを書いたら持っておいで。添削してあげるからさ」

 

いい人に会うことができたと喜んで帰ったのですが、次に訪れたときの態度に失望しました。

 

「君、センスないなぁ。君の書いたPR文には大変な苦労を乗り越えた経験が描かれている。そこから得られるキャッチコピーを考えるなんて簡単だろう?」

 

私が持っていったキャッチコピーは、彼に刺さらなかったようです。

 

「先輩、すみません。プロの目から見てよいキャッチコピーをつけてくれませんか」

 

彼の目が「待ってました」とばかりに光りました。

 

「”自律した個”だ」

 

「”自律した個”ですか?」

 

「そう。君は大変な困難を乗り越えることが出来た。学費も自分で払ってきた。つまり『自立』出来ている。更にいえば、遊びを犠牲にしてでもやるべきことに集中して成功してきた。だから『自律』の精神も持っている。『自立』よりも『自律』と書いたほうがかっこいいから後者にして、君は一人の人間だから『個』とする。いいだろう!」

 

「はぁ〜、ありがとうございます」

 

説明しなければ分からないようなキャッチコピーのどこがいいのかさっぱり理解できませんでした。しかし、プロが言うのだから間違いないんだと自分に言い聞かせました。

 

「あ、○○社の部長が来た。ごめんね、あとは自分で頑張ってね」

 

彼は急いで席を立ち、「部長〜」と声を上げて走っていきました。筆記用具をカバンに入れて帰る用意をしながら、取引先の部長にゴマをすっている先輩の態度を見て、「こんな社員をコネで採ったりしているようじゃ、この会社は大したことがないかもしれない」と思いました。

 

「とりあえず使ってみるか・・・」

 

ところが、そのキャッチコピーはあまり評判がよいとはいえませんでした。ですから、就活の前半で使うのをやめてしまいました。

OB訪問で先輩たちに自己分析を手伝ってもらう人もいるようですが、私はオススメしません。少し会ったくらいの人間が行う「自己分析(他己分析と言い換えてもよいかもしれません)」など所詮は薄っぺらいからです。どうせOB訪問で先輩社員に時間を割いてもらうのならば、自己分析に時間を費やすのではなく、その時(その人から)しか聞けない詳しい会社の情報を収集することに時間を使ったほうが有益でしょう。

 

 

せっかくですから、私のOB訪問の経験をまとめておきます。これから就職活動をする人たちには参考になるかもしれませんので。

 

まずOB訪問の目的ですが「会社の本当の姿を先輩社員から聴く」ということに絞りましょう。先述したとおり、自己分析を手伝ってもらうようなことは省くべきですし、「コネを作ろう」などという邪まな考えも持ってはいけません。

ときどき「何社から内定を取れるか」を競っている学生を見かけますが、そういう人間は信用に値しません。どの会社にも「御社が第一志望です」といい、一つ目の内定をとってからも延々といくつもの会社を騙し続けているわけですから、「人を何人騙したか」を自慢しているのと同じではないでしょうか。本人に自覚がないとしても、誠実な人とはいえません。就職はあくまで「入社したあとに幸せになれるか」が大事であり、「内定をとること」や「何社から内定をとれるか」ということを目的にしてはいけません。

きちんとした目的を設定して就職活動に臨んだ人たちは、入社してからも幸せにしています。ところが、適当な考えで就職活動に取り組み、「内定を取ること」に専念していた人たちというのは、入社してから「こんなはずじゃなかった」となるケースが多いようです。いくつも内定をとっていた人の中には「あっちの会社にしておけばよかった」と後悔する人もいます。それでは結局、どこの会社を選んでいたとしても幸せにはなれなかったでしょう。

OB訪問の目的を「会社の本当の姿を先輩社員から聴く」ということに絞ったのにはワケがあります。リクルートブックや会社説明会の話だけでは会社の内情がつかめないからです。今ではインターネットのホームページや就活掲示板なども情報源として有効です。しかし、やはりOB訪問の重要性は変わりません。自分の知りたい事を直接その会社で働く人たちから聴くことが出来るのはOB訪問の最大のメリットなのです。

「OB訪問はしなくてもいい」

そのように先輩から教えられたという人もいると思います。でも、決して鵜呑みにしてはなりません。どの会社に入るかで人生は変わります。もし、就職活動をする前から入りたいと思う会社があるのであれば、是非その会社のOBに会いにいって欲しいと思います。できれば、一人ではなく、何人かに会うほうが良いでしょう。真剣に将来のことを考えているのであれば、人生の多くの時間を過ごすであろう会社のことを事前に調べなくていいはずがありません。OB訪問をせずに就職するということは、結婚相手のことを何も知らぬままに結婚するようなものであり、自分の人生を軽視しているのと同じだと考えてください。

また「いい会社かどうか」も重要ですが、できれば「自分に合う会社かどうか」を重視してください。相性が合わなければたとえ世間的にいい会社であっても、そこで幸せな人生を送ることはできないでしょう。蛇足ですが「人気企業ランキング」で決めるというのは論外です。ランキングというのは本当に移り変わりが激しいものです。将来、「ランキングが下がったからモチベーションも下がる」あるいは「人に自慢できなくなるので嫌だ」ということにもなりかねません。実生活においてランキングをネタに自慢できるのはせいぜい内定してから1年くらいのものです。

 

「OB訪問はいつから始めるべきか」

このような疑問を持っている方へ。ぜひ今すぐ始めてください。早すぎるなんてことはありません。世の中にはたくさんの会社があります。入りたいと思う会社の名前もすでにいくつかあるはずです。就職活動の後半は会社説明会や面接で時間がタイトになりますので、OB訪問に時間を割けなくなります。気になる会社のOBには積極的に早い段階からアプローチしましょう。

「どうやって会うか、誰に会うか」

OBへのアプローチ方法はいくつかあります。直接その会社の人事部に電話して、OBを紹介してもらうのも手ですし、友人・知人・先輩のツテを使うことも有効です。運良く会うことの出来た先輩社員から別の社員を紹介してもらうと、立て続けに同じ会社の社員に会えるので効率的だと思います。

また、OB訪問というのは、自分の大学の先輩に会うものだと思い込んでいる人も多いようですが、そのような決まりはどこにもありません。重要なのはその会社の社員に会うことであって、同じ大学の先輩にこだわる必要はないのです。思いのほか、このあたりのことを気にしすぎている学生の方がいるみたいですね。

「事前準備として何をするべきか」

まず「質問シート」を作成しましょう。面談中に質問事項を考えるのではなく「これだけは必ず聞いておきたい」ということを事前にまとめておくのです。そうすれば、限られた時間の中で効率よく質問でき、知りたい情報をより多く得ることができます。この「質問シート」は、別の会社に行っても聞けるような内容を盛り込みましょう。同じ質問をすることで会社の比較に役立つからです。「こちらでは聞いたけれども、あちらでは聞くのを忘れた」という事態は防がなければなりません。少なくとも「先輩の就職活動時の志望動機」や「社内の雰囲気」くらいは質問に盛り込んでおいてください。

次に「自己紹介シート」の話をしたいと思います。こちらも事前に準備していくことをオススメします。先輩社員はこちらのことを知りません。自分のことを説明する時間を省くためにも、自己紹介シートを事前に郵送しておく(FAXやメールも可)とか、会った際に手渡してさっと目を通してもらうようにすれば効果的です。中身の項目としては、出身地、出身校、好きな本・音楽・映画といったものが基本事項になります。これらにより相手に親近感を与えることができます。

しかし、それだけではあまり意味がなく、「自分の志望動機」とまではいかなくても、自分が大切にしている価値観、自分が抱いている夢、これだけは譲れないという条件なども記しておきたいところです。そうすれば、先輩社員から「この部分は、うちの会社で出来るよ」「この部分は、うちの会社では当てはまらないよ」と教えてもらえるかもしれません。

あと、細かいことですが「OB訪問グッズ」として以下のものを挙げておきます。

1.名刺
2.メモ
3.その会社の資料や本
4.クリアファイル

「質問シート」や「自己紹介シート」に加えて、名刺なども持っていくとよいでしょう。クリアファイルについてはすでに触れているので割愛しますが、その会社の資料や本を先輩社員たちの目の前にわざと出しておくのは効果的です。「こいつ、ちゃんと勉強してきているんだな」と印象付けることが出来ます。念のために言っておきますが、資料や本を読まずにただ持っていって「勉強したフリ」をするのは最低なのでやめましょう。

それから、訪問した際の注意点を挙げておきます。一にも二にも大事なのが礼儀・マナーです。先輩社員に不快な思いをさせてしまうと「この大学の学生は最低だな」「もう学生には会わない」と受け取られる恐れがあります。そうすると他の就活生や後輩たちに迷惑をかけることになります。

服装としては、リクルートスーツを着て、ネクタイを締めて、革のカバンを持っていくのがオススメです。私は当時、父からもらった革のカバンを携えて就職活動をしていました。すると何人かのOBや採用担当者から「プラスチックのケースで就活している奴らはダメだね。その点、君はきちんとしているね」と褒められました。見た目でマイナスになるのはもったいないですから、服装には気を使うべきです。革のカバンにこだわる必要は全くありませんが、白いスーツで訪問するなどマイナスになるようなやり方は控えるべきだと思います。

また、「先輩社員にメリットがないから」といってOB訪問を躊躇しているあなた。それは相手にどのようなメリットを与えたらよいかを知らないだけです。前述した「クリアファイル」は小さなメリットに過ぎませんが、例えば「今の学生は何に興味を持っているのか」といった情報を仕入れたい社会人は大勢います。優秀な社員ほど、仕事に直結するかどうかは別にして「若い世代で流行しているものを知りたい」というニーズを持っています。ですから、先輩社員にそういった情報を提供するなり、質問されたことに誠実に答えるだけでもメリットを与えることができますので、そのことさえ知っておけば大丈夫です。

最後に。会った後には御礼のメールを送りましょう。私の時代にはメールではなく手紙やハガキでしたが(笑)。

社会人になっても名刺交換した相手にはメールで御礼を述べるのが常識です。単なる御礼の意味もありますが、一度メールを送っておけば、次に何か用事などがあった際にメールを送りやすくなります。長い文章のメールは逆に嫌われますから、簡単・簡潔・明瞭な文面を心がけてください。追加で質問したいことも出てくるかもしれませんので、簡単な御礼メールで構いませんから送っておいて、いつでも気軽にアプローチできる状態にしておきましょう。

私は上記を心がけたおかげで充実したOB訪問を行うことが出来ました。ぜひ真剣に就活とOB訪問に取り組んでください。(就職先を決めた後に報告も兼ねて丁寧なメールを送っておけば、社会人になってからもよいお付き合い―お取引とか―ができるかもしれませんよ)

 

 

受験勉強でも戦略を立てて臨んでいた私は、就活をはじめてしばらくしてから「戦略」の必要性を感じ始めました。

 

「僕の就活のゴールは・・・大企業の社長になること!」

 

中学生のときから「大企業の社長になる」という夢を持っていた当時の私は、就活のゴールを「大企業の社長になること」と定めました(今ならこんな未熟なゴール設定はしませんが・・・)。

 

「大企業の社長になるには、大企業に入って出世することが一番手っ取り早い」

 

安易ですが、当時はそのくらいしか思いつかなかったため、照準を大企業だけに定めることにしました。

 

「とはいえ、社長になってから実績を作らないと面白くないから、業界No.1は避けよう。社長になって、自分の手で業界No.1にしないとかっこよくないもんな」

 

こうして、中小企業だけでなく業界No.1と呼ばれるような大企業も候補から削除しました。

世にいう「就活本」と呼ばれる類のものを何冊か買ってきて、それらに従って履歴書を書き、面接で成功するためのイメージトレーニング(シミュレーション)をしました。

「なになに?ほう、過去の内定者はこんなことをエントリーシートや履歴書に書いていたのか」

「なるほど、この会社の内定をとるためにはこんな志望動機を書けばいいのか」

安易にも、就活本に掲載されている過去の内定者のコメントを真似してエントリーシートを書いていました。また、「修正液はよくない」ということで、まず鉛筆で下書きをし、それから慎重にボールペンでなぞっていました。

「3分間で起承転結をつけて話せ」「銀行は紺のツーボタンのスーツでなければならない」「数字や具体例で攻めろ」「自己PRはインパクトが命だ」

就活本にはまことしやかに様々なテクニックが書かれていました。ところが、当時の就活本の内容はどれも参考にならなかったというのが、内定を決めた時点での私の結論です。この頃にもっと本質について書かれている就活本があればよかったのですが・・・。

 

 

「ばっちりだ。この戦略に沿ってやれば間違いない」

いくら就職氷河期といえども、優秀な人間から内定が決まっていくはず―だから自分は大丈夫なんだと思っていました。

この頃はまだ、インターネットを使った就職活動は一般化していませんでした。それだけが原因ではありませんが、とにかくリクルートブックや友達ネットワークなどの限られた情報の中で立てた戦略は稚拙なものでした。

就職活動の初期段階の私は心の奥底で就職活動を舐めていました。その証拠の一つとして、最初に立てた戦略には「自分の都合」しか織り込まれていませんでした。

当然の結果として、その後私は厳しい「現実」の壁にぶち当たることになります。そして、途中で抜本的な戦略転換を迫られることになりました。人生で発生するイベントの中でも非常に重要な「就職活動」を目の前にして少しでも油断したことは、私の未熟さの証だったといえるでしょう。

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お知らせ

01/31/2006

『プレジデントビジョン』書籍化第2弾!

〜未来の社長たちへのメッセージ〜
プレジデントビジョン 成功の方程式

《本書に登場する今もっとも注目を浴びているトップたち》

近藤 太香巳
(ネクシィーズ代表取締役社長)
森下 篤史
(テンポスバスターズ代表取締役社長)
西山 裕之
(まぐクリック代表取締役社長)
加藤 順彦
(日広代表取締役社長)
広野 道子
(21LADY代表取締役社長)
中村 利江
(夢の街創造委員会代表取締役社長)
平野 岳史
(フルキャスト代表取締役社長)
堀 主知ロバート
(サイバード代表取締役会長兼代表執行役員)

※本文掲載順(敬称略)

01/12/2006

『プレジデントビジョン』がついに書籍化!

〜未来の社長たちへのメッセージ〜
プレジデントビジョン 起業への情熱