【増永】 遠藤社長がそうした心理的なところに注力しようと思ったきっかけなどはございますか。
それは大学生時代の話に戻ります。
当時、1つだけまともにきちんと出席していた授業がありました。
それは消費者行動学みたいなものだったのですが、ここですごく心に残っている講義があるんです。
それは当時、マーケティングの先駆け的なことだと言われているのですが、ある企業がインスタントコーヒーを世界で初めて売り出しました。
売っている側としては、コーヒー豆を挽かずに手軽にコーヒーを飲むことができる―粉を混ぜるだけで飲めるなんて、革命的じゃないかと思っていたわけですよ。
しかし実際には、思っていたほど売れない。
香りも味もそれほど悪くもない。
値段も高すぎず、それなりに売れるはずだと思っていました。
予想とは正反対の結果となり、売れなくて困っていました。
そこで理由を探るためにも、女性をターゲットにしたインタビューを行なったそうです。
「これってどうですか?」と質問をすると、「なんだか香りがいまいちね・・・」「美味しくない」とか否定的な回答ばかりだったそうです。
それを聞いた研究者たちはなにを思ったかというと、インタビュー結果では「味が悪い」「香りが悪い」とか言われるけれど、本当はそこまで悪くないのではないか―ということでした。
そこで、納得いかず次のような実験をしたそうです。
AとBの2種類のコーヒーを用意しました。
1つは普通に豆から挽いたもの、もう1つはもちろんインスタントコーヒーです。
それを中身を言わずにターゲット顧客に飲んでもらいました。
どちらのほうが香りが良いのかを聞いてみると、AとB、ほぼ半分に意見は分かれました。
つまり、必ずしもインスタントコーヒーの品質が悪いというわけではないことが証明されたのです。
ではなぜ一番最初に実施した実験で多くの女性が「インスタントコーヒーは香りが悪い」と言ったのか、今度はその理由を探ることにしたそうです。
100名の女性を呼んで、50名に分けてそれぞれ別の部屋に入ってもらいました。
そこである方がこういう買い物をしました、と言ってレシートを見せたんです。
それは10品目の買い物レシートなのですが、片方の部屋では10品目のうち1品目だけインスタントコーヒーになっていて、もう一つの部屋では、インスタントコーヒーではなく豆から挽いたコーヒーとなっていました。
「レシート内容を見て、どう思いますか」と質問したところ、インスタントコーヒーを買った方は「買い物下手で怠け者の人」という評価をみんなが下しているんです。
もう一方のレシートについては、別に特徴のない答えが出てきたそうです。