【増永】 出雲社長がユーグレナを 設立されたきっかけなどを教えてください。
大学1年生の夏休みに初めて海外旅行へ行ったんですね。友人 たちはみんな海外へ行ったことがあったのに、大学生になるまで私は行 ったことがなくて・・・とにかく行ってみたかったんですよ。
そこで、夏休みにいよいよ行くぞ、となったわけです が、どうせ行くならみんなが行かないような珍しい国にしようと思いま した。そこで決めた国がバングラデシュで、当時は観光客が1年で100人
に満たないというマイナーな国でもあったのです。
初めての海外がバングラデシュとなると、帰国し てからも周りからかなり関心を寄せられるかな・・・と思っていまし た。そんな軽い理由から選んで行ったわけですが、その後の人生に大き
な影響を受けたのです。
2011年10月末に、地球の人口が70億人になりま した。しかし、そのうち10億の人たちは十分な栄養を得られていないと いう現実をご存知でしょうか。
バングラデシュへの海外旅行 を機に私はこれを知ったのですが、食べ物を得られずに空腹を満たせな いことが問題なのかと思っていました。だけど世界中どこを探しても、
内戦などの一部を除いては何かしら食べ物を食べることはできているの です。
一般的に貧しいというイメージが強いバングラデ シュでも、1日3食カレーなどが出てきます。ヨーロッパではパンが出さ れ、アジアではお米。ただ確かに主食以外の野菜や魚、お肉などはあり
ません。となると、ビタミンやたんぱく質などの栄養素は不足してお り、空腹ではないけど抵抗力・免疫力が低下して病気にかかりやすいん
ですね。そういう人たちが10億人いるという計算になります。
そういう現実を知り、栄養をつけられるようなそ んな野菜があれば、みんな喜ぶのではないか―バングラデシュへの人生 初海外旅行をきっかけに、そういう食べ物を探すようになりました。そ
れはお米とかではなく、野菜であることが大事であると思っています。
ところで、『ドラゴンボール』という漫画に仙猫 カリンというキャラクターがいるのをご存知でしょうか。「仙豆(せん ず)」という豆を育てているのですが、これは、食べると元気になると
いう代物なんです。つまり、人間が生活するのに必要な栄養素が全部含 まれているんではないか。
それを見て、実世界にも仙豆のような豆があれ ば、10億人が栄養不足になるなんてことはありえないのではないかと思 ったのです。実際にそれに近いようなものがあるのではないかと、探し
たりもしたのですが・・・残念ながらそんな都合のよいものは実在しま せん。野菜は野菜の成分しか持ち得ないのです。
そんなふうに仙豆にかわるモノがないかと探して いた頃、大学で「ミドリムシ」についての授業を受けました。ミドリム シは植物だけれども自ら動き、動物だけれどもまるで植物のように光合
成を行なうという、両方の性質を持つ生物であることを知りました。
植物でもあり動物でもある、ミドリムシ。じゃあ、この両方 を併せ持つミドリムシを食物とすれば、栄養はどうなるのだろうか、と 思ったんです。
そこでミドリムシについて調べてみたところ、な んと多くの研究者が「ミドリムシは世界の栄養不足を救う生物である」 と論文を発表していました。つまり、ミドリムシには植物と動物のすべ
ての栄養素が含まれていて、ミドリムシを培養していけば世界を救うこ とができるということです。これが、「ミドリムシ計画」でした。
まさに、ミドリムシが現代の仙豆だ―そう思いま した(笑)。
● すでに研究がなされていた のですね。
そうなのです、多くの研究者がミドリムシに注目しているこ とが分かりました。そして、大学3年時に農学部に理転し、生物について 学び、「将来いつか、私がこのミドリムシ計画を進めていきたい、そう
いう仕事に携わりたい」と思うようになっていきました。
【続く:1/5】
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