【増永】 起業の経緯をお伺いできますか?
98年の2月に起業しました。その直近はアメリカンオンラインの日本法人にディレクターというポジションで在籍していました。当時、アメリカでのwebビジネスの物凄い盛り上がりを見て、「もう直ぐ日本にもその波がやってくる」と確信し、創業しました。
● 最初に手がけたビジネス、及び、これまでに手掛けたビジネスを教えてください。
創業のときの目論見書は今でも残っているのですが、やりたいことが多すぎて、一つに絞りきれないところがありました。普通は一つに絞るべきなんでしょうけど、僕らは「べき論」ではないところをやってしまったところがあります。
いろんなものをどんどん連続的に生み出していきた
いと思いまして、当時はあまりなじみのなかったインキュベーターという業態を選択しました。
まず最初にやったのは、一種のリサーチですね。これはたまたま富士通系の富士通総研というところから、アメリカのインターネットビジネスを中心としたリサーチの仕事の依頼を受けました。仕事を兼ねな
がら自分たちのやりたいことも探せるという一石二鳥の仕事でした。最初の半年近くはそれをやっていましたね。
で、その中でやりたいことを絞っていったという感じです。最初にやったのがスペースファインダーというビジネスで、
ちょっと小手調べ的なところがありましたが、本格的に狙ってやったのが自動車のオンライン見積もりサービスのネットディーラーズとういものです。
これは今で言うところのオートバイテルとか、カーポイントみたいなものと考えていただけるとわかりやすいと思います。自動車の見積もりをオンラインで取るという当時はどこもやっていなかったというサービスです。その意味では「ぜんぜん早すぎた」というサービスを「ぜんぜん弱小のベンチ
ャー」がやったわけです。
それでも現在普及しているサービスの原型となる内容はすべて盛り込まれてあって、それなりにインターネットの業界内とか自動車業界には波紋を呼び注目を浴びました。ところが、さらに注目を浴びるきっかけとなったのは、ネットディーラーズのコンテンツをYahoo
JapanさんのYahoo!自動車と組んでコンテンツを提供するビジネスです。その約半年後、ソフトバンクからの買収を受けたということでインターネット分野
M&A第一号となり話題になりました。これにより、我々にとっても財政的基盤ができましたね。
● Yahoo Japanと提携するきっかけは?
自分たちで立ち上げただけではアクセスが稼げないと思いました。そこで当時からもっともアクセスの多いサイトであったYahooのアメリカ版をよく見たところYahoo
AutoというYahoo!の自動車コンテンツがあってですね、日本にはまだそれがなかったんですよ。で、それをすぐさま先回りして提案し、なんとかそこを我々にやらせてくれとお願いしたところ、ほかはまだ来てなかったので、我々にやらせてもらうことになりました。
今は、プロトコーポレーションというところで引き継いでやってもらっています。本来でしたら自動車雑誌とかそういうところがやるべき内容なんですけど、当時だから取れたということで(笑)、今となってはまったく無名のベンチャーではとてもじゃないけど契約はもらえなかったと思い
ます。タイミングがよかったということですかね。
● その後が有名なエピソードであるソフトバンクの孫正義社長との話になると思うのですが。
これまた非常にタイミングがいいといいますかラッキーといいますか。たまたまソフトバンクの孫さんとマイクロソフトのビルゲイツとの間で、マイクロソフトが手掛けているインターネットビジネスのいくつかを日本にもってこようという企画が進行していたそうです。そのときはまだ極秘でやって
いたそうですけど、そのNo.1に上がっていたのがカーポイントというマイクロソフトがアメリカでやっている自動車のオンライン見積もりサービスだったのです。
我々がスタートしてから半年後にこれをやるということになっていたそうですが、ちょうど孫さんがYahooと組んだこともあって、私たちのこのサービスが目に留まり、我々が電話で呼ばれたわけです。最初は表敬訪問程度に考えていましたが、ある程度話が進んだところで我々のビジネスを売ってく
れないかということになりまして、びっくり仰天というエピソードですね(笑)。
● インキュベーターという業態に本格的に挑戦しようと決めたのは富士通総研の仕事の前ですか?後ですか?
前です。会社勤めを続けながらネット上のいろんな人脈の中で勉強会的なことをやっていました。その中で既にインターネットビジネスのインキュベーターというのを見つけていました。アイディアラボという会社なんですけど、そちらなんかをみて、「あーこれは面白いな� △いい覆 廚
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● この二つの後にも連続的に新しいビジネスを立ち上げられましたね。
今まで10個以上あります。大物だけを言えば、売上高が伸びているFreeMLとネットマイルというサービスをご紹介します。FreeMLとはユーザーが無料でメーリングリスト
を作れる非常に便利なサービスなんですけど、これは、他のメール系のサービスと統合後、月間数億円レベルのビジネスに育っています。
実はFreeMLというのは、起業家志望の学生一人が始めたビジネスなんですよ。ソフトバンクが買収して、その後Yahoo!自動車となるネットディーラーズの買収が基本的に決まった頃、私はビットバレーというムーブメントを起こしまして、毎月開催していたビットバレーの飲み会の中に、その彼がい
たのです。
まさに自宅のマンション一室で小さなサーバーで細々とやっていたんですけど、そのときに彼と知り合ってですね、我々も「メーリングリストは面白いな」と思っていたところ、その原型がそこにあったというわけです。ですからFreeMLとは、彼を迎え入れる格好でシステムを全とっかえ的に構築し
なおし、システムを増強してリニューアルスタートしたものなんですね。
その後、インターキュー、現在のグローバルメディアオンラインの熊谷社長が、やはり同じようにメールメディアの将来性に目をつけられていて、「一緒にやらないか」という話になり、合弁でFreeML.comという会社を作って大きくなりま
した。現在、ユーザー数が延べ600万人いるという巨大なシステムになっているのですが、我々のインキュベーション作品の一つです。
もう一つはネットマイルというユーザー数が約150万人の事業です。売り上げ的にもかなり伸びてきて黒字化も達成しました。ネットマイルとはネーミングで大体想像がつくと思いますが、オンライン上のマイレージプログラムです。いろんなオンライン上のアクティビティに応じてマイルが
もらえるというサービスですが、こちらも2000年の秋に私が発案し、2001年の4月にオープンしました。約1年半でそこまで成長したというサービスです。