● 着任されたばかりの成宮社長による改革は、すぐに周囲から認められたのでしょうか。
そうですね、最初は「お前はなにをしに来たんだ」「とりあえずこの店は閉めるから、余計なことをするな」と言われていました(笑)。しかしこちらも負けじと、地道に改革を続けていたんです。そうしたら、やった分だけ商品が売れるということが分かってきました。
店側としては、とにかく在庫を減らさなければならないので、私もそのためにさまざまな提案をしたんです。そしてそれを実行に移していきました。すると、見る見るうちに売上が上昇。見える形で結果が出始めると、経営者のほうも「もしかしたら、閉店せずにやっていけるかもしれない」と希望を持ち始めるんですね。
こうして改革を進めていくうちに、価格設定以外にもあった直接的な赤字要因が浮き彫りになっていきました。
● 具体的にはどのようなことだったのですか。
商品の仕入れルートに端を発するものでした。
置いている商品が日本、特に京都からの輸入品でした。たとえば有名な浴衣屋、灯篭屋、屏風屋・・・すべて、いわゆる老舗のようなところから仕入れていたんです。さらに船便だったので、ニューヨーク店舗への納品までに8ヶ月ほどかかっていました。だから発注も8ヶ月前には済ませなければなりません。
それらを管理していた輸出部門は東京本社にあり、そこにはニューヨーク店専属の社員が10人ほどいました。彼らを通じてニューヨークに商品が届くわけですが、いかんせん、納品されるまでに多くの人が間に入るために、人件費を含めコストが上がる一方だったのです。
それが明確となったからにはその部分を全部カットしてしまえば、コストダウンにつながるのではないか・・・。そしてそもそも京都の灯篭を欲しがる人が、ニューヨークにはどれだけいるのか。実はそれほどいないだろうという結論に達したのです。
象徴的にインテリアとして置くのであればいいのですが、売り物としてはほかにもっとお客さまが買いやすい灯篭や浴衣があるはず。それらを商品として取扱えば別段問題はないと思ったんです。
偶然、サンフランシスコやロサンゼルスのほうで、安い品物を輸入している会社があったんですね。ならば、京都からわざわざ高いものを輸入するのではなく、そちらに切り替えてコストを抑えていけばいいのではないか―そういう提案をしてみたところ、会社から猛反対を受けました。
「そんな安物を売るためにニューヨークに出店したんじゃない」、こう言われたのです。それを聞いて私は、「高いものを売るためであるならば、この在庫の量は一体なんなんだ。明らかに売れていないじゃないか。それでも売り続けるのか。こんなことを続けるということは、赤字をずっと続けるということだ」―そう反論したのです。
そうはいっても従来の方針を変えるとなると、東京本社にいる10人の輸出チーム(「外国部」)はどうするんだ、と。ニューヨーク店への輸出専属でしたから、商品の輸出自体が無くなってしまうと彼ら全員が不要になってしまうわけです。だからといってクビにすることはできないですし、急な人事異動もありえません。
そうした理由もあり、「勝手なことをするな」と言われて、かなり揉めていたんです。しかし危機迫っていましたし、現状を維持することは従業員10人を食わしていくためだけのことであり、赤字を脱することにはつながらない。ニューヨーク店はずっと赤字のままです。
さあ、どっちの道をとるのか―こう社長に訴えたところ、ようやく、このままでは赤字から黒字転換は不可能であると判断されたのです。
【続く:1/10】