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【増永】 経営において御社の特徴などあれば、教えてください。
3つあって、1つは先ほどのコールセンター。そして2つ目がウェブのマーケティング力、最後はイーコマースだけで完結しない、顔の見える営業。これらがそれぞれきちんと機能していることが、1つの成果につながっています。
基本的に、非対面で販売すればもっと儲かるんです。人件費がかかりませんから。だけど携帯電話は非対面では絶対に売れないということや、通信サービスの契約に本人確認をしなければならないという問題もあります。もしくは、お客様ごとに、カスタマイズもやらなければならないので、ここでも同様に対面が必要になるのです。そこで、先ほどの3つを徹底することで、大きな強みが生まれるわけです。
もう1つ、特徴的なことを挙げれば組織体制です。商品カテゴリー別に、事業部制をとられることが一般的な組織体制ですよね。
しかし当社の場合は、営業は営業で1つの括りになっていて、ここに回線系のチームも携帯電話の販売やレンタルのチームも入っています。
なぜこのようにしているのかというと、社内の営業が他の営業に対して、自らのお客さまや獲得した案件を紹介するという仕組みになっているからです。今では、会社の売上げの約20%が、社内での紹介制によるものとなっています。
当然、自分のお客さまですから、自ら対応して売上げを上げてもいいんですよ。だけど、なかなか集中できる時間を確保できないのが現実です。なぜなら、アポイントがずっと埋まっているから。
コールセンター側からアポイントが供給されているので、次々とウェブから入ってきたお客さまとのアポイントが営業それぞれに充てられるのです。だから、他に集中する時間が全然足りないのです。
そこで、社内紹介制度を設けました。成績は当初は折半にしていましたが、これではみんな紹介しません(笑)。そもそも、この考え方は中途半端だったなと気付いたのです。
そこで、自分で取っても、紹介してその人が獲得しても、ダブルで成績をカウントしよう―と言った瞬間、みんな合理的ですよ・・・すごい勢いで社内紹介をし出したんです(笑)。それを見て、やっぱり需要はあるんだな、仕組みが大切だなと分かりました。
場合によっては、自分のノウハウだけでは足りず、他の人のノウハウが必要になるときもあります。そうしたことを、自然と補えるのもこの紹介制度の特徴です。しかも成績はお互いにカウントされますから。現時点では、うまく機能している制度です。
早々にこの制度の仕組みを変えられたことは良かったですね。また、そもそも事業部制になっていたら、「隣がライバル」という意識になって、それぞれ紹介しないと思います。だけど1つの営業部という感覚になっていれば、紹介も出しやすい。これは当社の大きな強みにもなっています。
● そうした取り組みは、ひとつのイノベーションだとも思いますが、その他イノベーションとして取り組まれていること、導入されていることはございますか。
5年ほど前から、社内専用のソーシャルメディアを活用しています。これらを利用して現場の声が挙がってくる仕組みを作り出すことを目的としています。
2つのポイントがあって、1つは「競合社がどういうことをやっているか、という情報を必ず上げること」。もう1つが、「こういうことをすれば面白いよね、というものを上げること」です。2週間に1度、定期的にこれらの情報を現場から上げてもらい、それに対してどうしていくかを考えたり議論したりしています。
ここでは「情報の量」が、何か新しいものを生み出せるもとになっていくと考えているんです。たとえば、経営陣はお客さまと直接触れているわけではないので、自ら声を聞きにいかないと、発見力といった点では現場にいる社員よりも劣っています。だから限りなく聞ける体制を作っていきたいと思うんです。
● 社員が100人いれば、100個上がってくるということですか?
そうです、それらの情報をすべて役員が見ていきます。そして自分の業務に関連する内容については、きちんと回答します。場合によっては、それらの声をもとにキャリアさんと交渉して新しいサービスを生み出すこともあります。これはまさに、ひとつのイノベーションですよね。
たとえば、ソフトバンク社で提供されている固定電話サービスがあるのですが、これはひとつの事例です。正式なサービスとしてリリースされるまで、まだ名称がつく前から1年ほどかけてマーケティングをしていました。その結果、これはいよいよ正式にリリースできるぞ、となりソフトバンク社で商品化していったのです。
こうしてサービスも誕生するんだ、ということを実感しましたし、結果私たちの武器も増えていくので営業もやりやすい。しかも顧客満足度の高いものを作っていけるので、そういう意味でイノベーションといえるでしょう。
● そうしましたら、尊敬する人物を教えてください。
やはり孫正義氏ですね。年に1,2回、お会いできる機会があるのですが、やはり素晴らしい経営者だと感じます。
こうした業界にいるからこそ、会える機会に恵まれているのですが・・・そうじゃないと、なかなかお会いできる人物ではないですよね。
● 好きな言葉を教えてください。
「選択と集中」です。経営者としていろいろなことをやってみたいとも思いますが、とはいえ私も天才ではないので、できないことはできません。だから、世の中の情報通信産業革命に貢献することにとにかく邁進したいと思っています。
一方、経営をしていると、「こんなことやりませんか」というのがたくさん来ます。
ありがたいですが、ほかの分野に拡散してしまったら、何も実現できないことは分かっています。とにかく自分のやっている事業一つひとつを「日本一」にしていくことにこだわり続けてたいのです。
そのためには、たくさんの選択の機会があるなか、ポイントをどこに置いているかというと、「自分が本当に興味を持てる事業なのかどうか」ということ。この一点に尽きます。
自分が興味を持てれば、人より絶対に詳しくなるし、情熱を注ぐことができます。そうすれば、必ずその情熱はお客さまにも伝わり、当然、社員にも伝わることで行動も変わります。すべてが良い方向に動くのですね。
だから興味の持てない事業に時間を費やすこと自体、非常に無駄であると思います。そうした部分を加味して選択することが、非常に重要だと思います。
でもただ単に、「自分が興味を持っているから」という軸だけで、選択するのも違います。「やりたいこと、やれること、やらなきゃいけないこと」―これら3つが重なれば、事業としてやっていこうと決めています。
やりたいこと―自分たちで、「これは絶対将来、こうなっていくし、興味があるからやろう」と思うこと。
でもそう思ったことが「やれること」なのかも重要です。たとえば、仕組みやリソースがないとすぐには取りかかれません。
そして「やらなきゃいけないこと」というのは、志のようなものです。自分たちがやらないと、世の中変わらない。と思えるかどうかです。
世の中に、貢献していこうという想いや志が、大きく影響していますね。
● 好きな本などはありますか。
本を読むことよりも、実際にいろいろな人に会うことを優先しています。もちろん、本の良さも理解しますが、もっと深いところを知りたければ、当人に会って知るべきなのかなと思っています。
● 最後に、御社のビジョンをお願いします。
グローバルWiFiという「世界中いつでもどこでも快適にモバイルインターネット」をキーワードにした海外パケット定額制サービスを作りました。これを、日本から世界に行く人だけではなくて、世界から日本に来る人、そして世界から世界に行く人たちに利用していただけることを目指しています。
現在、スマートフォンやタブレットが世界的に普及し、今後もますますその需要は増えるでしょう。そうすると、私たちのサービスのニーズはもっと増えると思います。
避けなければならないのは、ますます国を超えた利用が増えていくにつれて、当社のビジネスフィールドが狭くなってしまうことやこれまでアクティブにできていたことができなくなるということ。
そうした環境を少しでも改善していくために、世界的なインフラを作り上げたいと思っています。そのツールの1つが、「ビジョン グローバル WiFi ®」サービスです。今は、ここに集中しています。
そして、皆さまに「あのサービスはいいよね」と言っていただけるようになりたいです。
【完:5/5】
次号:株式会社ISOWA 代表取締役社長 磯輪 英之 氏
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