
この感動を体験する人を一人でも多く増やしていきたい
起業するにあたって重要なことの一つに「どの事業を選ぶか」という事があります。
どの事業を選ぶかによって将来性も事業規模も大きく左右されてしまいます。
大本命の事業の市場が巨大であれば、売上高1兆円も夢ではないかもしれません。
私は起業2年目に、この命題に気付きましたが、資本力と経験がなければ、選びたくても選べないという現実に直面した事を思い出します。

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■これまでの熊谷社長へのインタヴューはこちら
vol.97 vol.98

【増永】 商売についてお伺いしたいのですが、「こうやれば売上と利益は自ずとついて来る」といったものはありますでしょうか。
【熊谷】 やっぱり売上と利益は結果としてついてくるのであって、売上を上げることを目的と思っちゃ駄目だと思います。
もちろん日々のテクニックはあるんですよ、数値を管理したり。
弊社は物凄く数字に細かいから、社内には数字を書いた紙がいっぱい貼ってあったでしょう(笑)。
ですが、数字っていうのは結果であって、目的であってはなりません。
会社の売上や利益というのは体に例えると血液なんですよね。
会社は売上や利益がなかったら死んでしまいますから。
でも、普通はただ生きられればそれで満足かというとそんなことはないじゃないですか。
誰かを愛したり、夢を持って行動したりというように生きる糧として何かの「想い」があると思うんです。
このことは会社にも通じています。
僕達は夢とかビジョンという言葉に集約しているのですが、会社の「想い」が重要なんです。
僕がインターネット事業に参入したのは94年あたりです。
インターネットを初めて体験して、僕は感動しました。
スタンドアロンだったPCがネットに繋がって世界中の情報が瞬時で手に入るし、電子メール等を通じて世界中の方々と交信が出来て。
僕は「これは凄い」と自分で本当に感動したんですよね。
僕が一番最初にやったのはプロバイダー事業なんですけど、なぜこの事業を選んだかというと、この感動を体験する人を一人でも多く増やしていきたいと思ったからなんです。
営業数字を見ていても、僕が最初に感動したその想いと同じ人が日々増えていくということですから、見ていて凄く嬉しかったんです。
結果として売上と利益が上がっていく。
売上と利益が上がる事そのものが喜びの中心だったわけではないのです。
今もプロバイダー事業は続いていますが、他にサーバー事業とドメイン事業をやっています。
インターネットが繋がったとしてもコンテンツが少なかったら楽しくないじゃないですか。
ぼくはインターネットの中を楽しくしたかったんです。
今、サーバーは10万台、ドメインは30万件ありますから、おそらく僕達が日本で一番多くの法人のホームページを預かり、結果として日本のコンテンツを一番多く増やしたと自負しています。
プロバイダー事業が波に乗ってきた97年頃、僕は次に何をすべきかを考えました。
当時は大手のプロバイダーも価格面でリーズナブルになってきていて、価格面においては大きな差がなくなってきていたんです。
このままいけば価格競争に巻き込まれ、せっかく多くの方に喜んでいただいているサービスが結果として立ち行かなくなる可能性が出てきている。
そんな流れの中、僕が目を向けたのが「インターネットに接続した後」のことだったんです。
多分ホームページを見たり、作ったり、メールをやりとりしたりということになるでしょう?実はこれにはサーバーというものが必須になるんです。
それに個人にしろ法人にしろ自分のアイデンティティーを示していくのに、ホームページやメールのアドレスがプロバイダー会社のアドレスになっているよりもドメインを使って自分らしさを出した方が見た目もいいじゃないですか。
ところがレンタルサーバーなんて、当時は100万円ぐらいで提供している会社がたくさんありましたし、ドメインの取得が某大手プロバイダーでは20万円、月の維持費に4.5万円〜5万円もかかる・・・そんな時代だったんですね。
「この価格面の敷居の高さをなんとかできないだろうか?」と考えた。
その答えが「価格破壊」でした。
レンタルサーバー4〜5万、ドメインは1年あたり数千円を払えば利用できるようにしたんです。
今じゃこれらの値段は常識になっていますが、最初に取り組んだのは明らかに僕らだった。
今の10万のサーバーと30万のドメインはここから始まったんです。
つまりそういう想いがお金という形で後からついてきたんです。
ですから、売上や利益ばかり追い求めても駄目なんだと思います。
やっぱり会社っていうのは想いが先にあって、その後に売上、利益を上げていく為の数字管理のテクニックがあるわけです。
さて、想いはもちろんあるんですが、最初にお話したとおり数字には非常に注意を払っています。
血液のたとえで言うなら、血圧は高すぎても低すぎてもいけなくて、健康に生きていくためには基準となる適正な数値があるじゃないですか。
売上や利益という数字にも会社が生きていくための適正値があって、予算目標という形にしています。
そのため弊社の数字管理はとても厳しいです。
例えば連結で12社あるのですが、毎週連結業績数値を試算していて、単体の会社においては毎日夕方にはその日の利益がわかります。
普通の会社の利益は、税理士さんとか会計士さんにお願いして翌月にわかるという感じですよね。
しかしこれでは、問題点発見までに1ヶ月、手を打つのに1ヶ月、結果が出るまで次の1ヶ月かかることになってしまう。
これでは遅すぎて駄目です。
やはりその日のうちに数字を見てその日のうちに手を打つ。
会社の動きにスピード感を出す秘訣です。
じゃぁどうやって数値を頻繁に見るかというと、僕達は全員iモードを持っていて、そこに一日2、3回営業の成績を各担当者から送ってもらうように指導しているんです。
その日の営業数字が昼間のうちからタイムリーに把握できる状況を作っています。
こうして現場にいるみんなは数値による目標をもって行動し、達成度合いによる信賞必罰の組織にしています。
出来る人間は評価され、出来なければその報いを受ける。
僕だって会社の数字が達成出来なければ報酬ゼロになるんです。
当然ですよね。
想いと同時に数字管理のシステムを完備し、やった人間が報われる仕組みを作っている事により、想いの現実化を目標数値に置き換え、スピードと一人ひとりのモチベーションを両立できているのだと思います。
ところで、想いを実現するにもその方法がとても重要になります。
会社ということで言うならどういう事業を選ぶかという事が凄く重要です。
これはいちよし総合研究所の調査結果なのですが「売上10億円までの会社はあっても無くてもいい会社。
売上100億円までの会社というのはあると便利な会社。
売上1000億円だと世の中になくてはならない会社」だそうです。
つまり今の僕等は「あると便利な会社」という位置付けですが、近い将来「なくてはならない会社」に移り変わることを目指しています。
そういう状況において何を最初に選び、どこに命を賭けるのか、社会生活の中でどのような分野にかけるかという事は本当に重要です。
例えば、僕等は将来のコンテンツ事業進出も検討しながらも、現在はインターネットのインフラ系の仕事に全力を注いでいます。
それはなぜならば、インターネットというのは今後も電気、ガス、水道と同じように社会インフラとして残っていくと信じていて、その中でも決して無くならない仕事を選ぶことが重要だったからです。
現在の事業を自動車に例えると、道路がプロバイダー、車を止めておく駐車場が、コンテンツを貯めておくサーバー、標識はドメインでしょう。
つまりインターネットが続く限り、プロバイダーもサーバーもドメインも決してなくなることはないはずです。
また、僕等はストック系の事業に注力しています。
事業家でもこれはなかなか気付かないことですが「一度ご契約頂くと継続して利用されるビジネス」が実に上場企業の中で大半を占めています。
例えばダスキンさんみたいなビジネスは、一度置いて頂くと毎月毎月収入になりますよね。
僕等も同じで、ご契約頂けると毎月毎月、毎年毎年収入になります。
そういうビジネスのほうが会社を成長させやすく、「なくてはならない企業」を目指すには近道になるはずです。
実はこういう形のビジネスは、昔は政府がやっていました。
例えば電気、ガス、水道、或いは煙草ですよね。
更に民間がそういうビジネスをするには許可が必要なスキームになっていて、普通の民間の企業は出来ませんでした。
こうすることで政府がコントロールして税収のベースにしていたわけです。
今は規制緩和でこういったビジネスに民間が参入できるようになりました。
昔からエリートが生え抜きで政府に集まっていたわけで、こういうビジネスはまさに先人の賢い知恵といえるでしょう。
そのようなチャンスを見極めて巧みに参入していく事は事業家として必要な事だと思いますね。
【続く:3/4】

無知の知
前号vol.98の熊谷社長のインタヴューでご紹介した「学ぶとは、いかに自らが知らざるかを知ること」から「無知の知」という言葉を連想したので、今日はこの「無知の知」を中心にお話したい。
西洋哲学史上でもっとも影響を及ぼしたと思われるプラトンをご存知であろうか。
紀元前427〜紀元前347頃に古代ギリシアで活躍した哲学者である。
全くの余談であるが、私の出身校である奈良高等学校の中庭にはラファエロ作『アテネの学堂』をモデルにしたプラトンとアリストテレスの像が立っていた。
今日まで全く気にかけていなかったが。
このプラトンは「対話篇」という形式をもちいて哲学者ソクラテスを描いた。
主人公であるソクラテスがさまざまな人との対話を通じて哲学していく。
プラトンはいくつもの対話を描いたが、その中に『ソクラテスの弁明』があり、「アポロン神託事件」に関する記述の中で無知の知に関する話が出てくる。
あるとき、ソクラテスの友人がデルファイのアポロン神殿に赴き、「ソクラテスより知ある者がいますか」とたずねたところ、アポロンの神託は「ソクラテスより知あるものはおらぬ」とこたえた。
これに困惑したソクラテスは世間で「知者」と呼ばれている政治家、詩人、職人をたずねて、彼らのほうが知者であることを証明しようとした。
ところが、彼らは本当に大事な事柄について知らないにもかかわらず、自分達は知っていると思い込んでいた。
ソクラテス自身は「自分がその最も大切なことを知らない」ということを知っている(無知の知)の点で、ソクラテスが彼らよりも知者であると判明したのである。
ちなみに、アポロンは太陽神。
医術、音楽の神であり、詩、数学、予言の守り神でもある。
輝くばかりに美しいので、ポイポス(輝くもの)、楽人の王、神託の王、黄金の弓の支配者でもある。
毎朝、東の宮殿で目覚め、黄金の太陽の馬車に乗って大空を通り、炎をたなびたせながら西の地平に降り立ち、馬をつなぐ。
ギリシアの理想に最も近い神で、永遠の若さ、強さ、暖かい心、冷静な頭の持ち主であった。
つねに中道を説き、過度をいましめた。
このアポロンがデルファイに神殿を建てたといわれているのだが、そこに二つの言葉が書かれている。
「汝自身を知れ」 by タレス
「何事につけても、度を過ごすことなかれ」 by ソロン
ディオゲネス・ラエルティオス『ギリシャ哲学者列伝』によると、以下のやりとりから、「汝自身を知れ」が出たという。
タレスは「何が難しいか」と問われて、こう答えた。
「汝自身を知ること」
タレスは「何がやさしいか」と問われると、こう答えた。
「他人に忠告すること」
このように見てみると「知る」ということは一体どういうことで、「知る」ことを「知る」ことすら難しいのではないだろうか。
「知るということは何ですか」という問いを、特に対話中に投げかけられると、困惑し、答えに窮する。
この困惑の状態を「アポリア」と呼ぶ。
「無知の知」を知り、謙虚に学び続ける姿勢は大切である。
逆説的ではあるが、「何かを知らなければ、何を知らないかを知ることもできない」と私は思う。
知を愛し、知を求め続けることは生きることの喜びの一つではないだろうか。
プラトンが描いたソクラテスの対話は、自らの不知を確かめる普段の営みであり、生きることでもあった。
最後に、哲学者ソクラテスの「哲学者としての生」についてお話しよう。
ソクラテスは人生の最後に裁判にかけられて処刑される。
彼は常識的な弁明を行い、赦免されると思われていた。
ところが、彼は、これまでの彼の生き方である「知を愛し求める」生を今後一切放棄する条件で無罪放免にしようと人々が申し出たとしても、こう言うであろうと宣言した。
「私は、アテナイ諸君、君たちに親愛の情をいだいている。
しかし、私は、君たちにではなく、むしろ神に従う。
そして、私が息するかぎり、可能なかぎり、知を愛し求めることをけっして止めはしない」(『ソクラテスの弁明』)
ソクラテスは自分の信念を貫き通す道を選んだ。
これは哲学者として知を愛し求め続ける生以外は生ではないということを意味する。
我々にはやるべきことがあるだろうし、やりたいこともあるであろう。
ところが、それに反する事を強要されたり、邪魔をされてしまう事もあるかもしれない。
もしかしたら、勝手に自分自身であきらめてしまうこともあるかもしれない。
「もしあそこで、挑戦していれば、今頃は・・・」と思っても後の祭りである。
悔いの残らない人生を送るためには、やるべきことをやる以外にはない。
夢をあきらめて、希望のない人生を送ることに、どのような「生」としての価値を見出すのか。
ただ、幸いにして一度あきらめた夢も、今この瞬間に蘇らせることができる。
今まで夢を持った事がない人も、明日には夢が見つかるかもしれない。
あらゆることに関心を寄せ、「無知の知」のような心で知を求めれば、今までに見たこともない世界を垣間見ることができるかもしれない。
経営に関わらず人生において、学び続ける事はよりよい生につながるだろう。
【PV TODAY 増永】

【編集後記】
高校時代、中庭におじさんの像が立っていることは知っていましたが、まさかプラトンとアリストテレスの像だとは知りませんでした。
プラトンらについてもっとあの頃勉強していれば、その価値を知ることができたのに、と思いました。
3月にOB会がありますので、またそのときにでもじっくり見てこようと思います。
奈良にはお寺など文化的・歴史的に価値のあるものがたくさんありますので、歴史を勉強すればするほど、よいところで生まれ育ったのだなとうれしくなります。

【2004年のスローガン】
『ヤリキリ』
【目標】
2004年6月末までに読者数5万人を超える。
2004年6月末までによりクオリティーの高いデザインに変更する
【ミッション】
プレジデントビジョンのミッションは、一人でも多くの起業家や優れた経営者を生み出すことに貢献し、社会をよりよくしていくことです。
【お願い】
これからがんばろうという人が周りにいたら、このメールを転送していただきたいです!
【配信日】
祭日を除いた月・水・金曜日


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