【増永】 理念の共有以外にも、継続的にするためにはどのようなことを取り組まれていますか。
やはり物事をロジカルに捉えることでしょうか。
「ただなんとなく」というのではなくて、1+1=2になるごとく2+2=4だという、きちんとしたロジックに基づいたマネジメントスタイルが大切ですよね。
かといって、ロジックだけでは明快にできないようなこともたくさんあります。
それは世で言うところの「勘」に頼るんです。
「勘」というものは、結局のところ理論に裏づけされていると私は思っています。
たとえば甘いとか辛いといった感覚は、数字ではなかなかロジカル的には表現できません。
さらに言えば、人間の言葉もローマ字24文字だけでは表現の限界を感じるはずです。
そういった意味でも、通常学習する定量的なものではなく、概念の形成能力が求められます。
理念などの概念形成は、先ほど申し上げましたような学習による成長という点では、難しいです。
これは感覚的なものですから。
テクニカル的なものは、時間をかけて勉強をしていけば次第に身についていくものです。
一方、3つの能力の一つである、コンセプチュアルスキル―価値観を創出する概念を学ぶのは、非常に難しいです。
たとえば「西に行くぞ、東に行くぞ」とリーダーが言ったときに、なぜそちらの方向へ向かうのかを説明しないと人はついてきません。
だから説明をする必要性が発生するんです。
しかし究極を言えば、西であれ東であれ、どちらでもいいのです。
テクニカル的な部分で言えば、西のほうが東に比べて坂が少ないからいいとかそんな意見はあるかもしれません。
でもそんな目の前のことではなくて、もっともっと高いところから物事を見てほしいのです。
そのほうが、最終的には幸せになれると私は思っています。
結局のところ、今よりもさらに高いレベルでの概念があれば、リーダーシップの質も大きく変化するのではないでしょうか。
コンセプチュアルスキルは、人間として醸成するのにいちばん難しいスキルかもしれませんね。