【増永】 澤社長がデータセクションの社長に就任されるまでに、どのような人生を歩まれてきたのか教えてください。
13年ほど富士通に勤め、その後は商社に転職。そこからさらに事業投資会社に転職しました。もともと富士通に入社する頃から起業家志向が強く、いずれは会社を立ち上げて世の中を変えられるような何かを作りたい―そう思っていたんです。
今から10年ほど前でしょうか、富士通に勤務していた頃、当時はCGMとかブログサービスが一般的になり始めた時代でした。そういう流れを目の当たりにしたとき、インターネットメディアのさらなる可能性にわくわくしたんです。だけどそうしたものを俯瞰的に見たとき、国内をターゲットにしたビジネスモデルばかりだな、と思ったんですよ。
富士通にしても当時は海外展開が上手くできていなかったですし、他の競合社さんも同じでした。
現在でもそうですが、グローバルに通用するような、IT関連の会社はあまりありません。
世界に目を向けて、日本発のビジネスモデルを生み出さないといけないんじゃないか、ダメでもそういったマインドを持つ人がどんどんでてくるべきなのではないか―このとき強く思ったんですよ。それで、そう思うならまず自分が頑張ってみないといけないかと思ったのです。
そこで自分なりに、「世界で通用するビジネスモデルとは何なのか」をいろいろと考えてみたのです。
導きだした答えは、まず一つがソーシャルメディアを分析して、そこでいろいろな発見を通じビジネスにつなげるもの。そして2つ目に、コンテンツビジネスモデル・・・要はアニメとか音楽とかです。日本は著作権でコンテンツを守ってきているので、おそらくそうした文化も他の国と比較して発展しているほうだと思うんですよね。
こういう背景があるからこそ、日本のコンテンツ力は海外と比べてもものすごく強い。この強いコンテンツを海外に広めていくというのも、ビジネスチャンスがあるだろうなと。
そして3つ目に、オンラインでのビジネスモデルです。たとえばオンライン英会話のようなもの。今でこそ珍しくないモデルですが、インターネットが一般的に普及し出した10年ほど前から、こうしたビジネスモデルを考えてきました。このいずれかを事業とした会社を、将来立ち上げたいと思ったのです。
その想いを実現するためにも、富士通から商社に転職していろいろと勉強をしました。すると、自分にとってファイナンスのノウハウが欠けていることに気付いたんです。そのタイミングでグロービスの創業メンバーであり、現在は株式会社ミドクラという会社の代表をされている加藤隆哉さんに出会い、彼に事業投資の会社へ誘われたのです。
入社前に、37歳にもなって簿記の資格もとりました(笑)。また入社後加藤さんからファイナンスについて色々と教えていただきまして、イーライセンスという会社に対して投資も行ないました。
グロービスで先生をやられていた加藤さんのファイナンスのノウハウは今でもすごいと思いますが、彼に実務でファイナンスを教えていただいた経験は自分の財産にもなっていると思っています。そういえば、ミドクラで加藤さんが17億円位調達されました。日本では破格ですよね。
このイーライセンスという会社は、著作権管理をされているジャスラックさんに次ぐ大手会社で、そこに事業投資したことで同社の社外取締役に就任しました。
● イーライセンスさんの社外取締役に就任することで、どのようなことを実現しようとされていたのですか。
先ほど挙げた3つのビジネスの考え方の一つになるのですが、グローバルに通用するコンテンツ流通(著作権管理)の仕組みを作れないかと考えていたのです。そこで、イーライセンスさんに投資をすることで、いろいろなビジネスモデルを作り出したいと思い、社外取締役に就任したという背景になります。
さらに並行して行なっていたのが、ソーシャルメディアを通じてのビジネスです。
10年ほど前に長野県の佐久という地に「白雪の詩」という白くて大きな石鹸が売られていました。形はすごく大きくて、使い心地は肌がすべすべになり、かつ300円弱という価格で安いと。もともとは台所用石鹸として売られていたのですが、洗顔でも肌によいというのを、東京のOLさんがブログで紹介したんですね。そうしたら、口コミでものすごく売れたんです。
この石鹸は、佐久にある「ねば塾」という会社で身体障害者の方々によって作られている石鹸だったのですが、このブログをきっかけに大きな話題となりました。それから数年経った2007年頃には、東急ハンズなどで売上ナンバーワンにもなったんです。今でもコンスタントに売れている代物です。
こうした事例のように、小さい会社で一つひとつまじめに作られている石鹸が、インターネット発でこれほどまでにブームになる時代になるとは・・・インターネットメディアの力の凄さを改めて知りました。
そこで思ったのが、この事例のように、「だれがつぶやいたか」、「どこまでネットで盛り上がっているか」という情報をもとにした、商品の売れ行きの相関性をみつければ、そのモノ自体が流行するかどうかをある程度把握できるのではないか・・・ということでした。
もともと私は、そういうビジネスモデルを目指していたんですよ。いち早く次に売れるモノが分かれば、たとえば共同経営だったり販売権の独占などなど、他社よりも早く対応できる可能性が出てきます。そうして、新たなビジネスモデルを生み出せるのではないか―こう思ったんです。
そしてもう1つ。日本はブログ人口が世界でNO.1、さらにツイッター人口は世界で2位なんですね。フェイスブックは23位なのですが・・・こうしたSNSでの全体的な環境を見ていくと、間違いなくアジアの中では日本は情報量という観点ではトップだと思うんです。
こうした環境を鑑みると、誰がきっかけとなり、どのような形で広がっていけば、そのモノが売れるのかということを掴めるのではないか。これを掴めるような仕組み、もしくはその仕組み自体を習熟させるようなことが実現できれば、きっと世界に通用する。ようやく、ずっと探し続けていた方向性が見つかったのです。
【続く:1/5】
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